起業の先人に学ぶ
「株式会社マイファーム」自産自消で自給率アップを目指す!
日本の食糧自給率が40%を割り込む一方、農業経営者の高齢化・後継者不足などから耕作放棄地は増加している。こうした農業を巡る問題を、消費者自身が農作物を作って食べる"自産自消"で解決しようというのが、マイファームだ。
株式会社マイファーム 代表 西辻一真(にしつじ・かずま)
1982年、福井県生まれ。京都大学農学部を卒業後、広告代理店に1年勤務。2007年9月、(株)マイファームを設立。08年8月、京都商工会議所主催「知恵産業創出ビジネスプランコンテスト2008」優勝。
レジャーとして農業を楽しむ市民農園を展開
——御社の事業内容を教えてください。
貸し農園の「マイファーム」の運営、農家の経営支援、村おこしの支援、苗や農具の通信販売、農業体験などのイベント開催の事業を手がけています。この中で収益の柱となっているのが貸し農園の運営です。
これは、農家から農地の管理・運営業務を当社が受託し、「マイファーム」として消費者に貸し出すというもので、現在、関西地域のほか埼玉県、名古屋市に1カ所ずつ、合計22カ所、延べ面積で約10ヘクタールを開設しています。(2009年3月11日現在)
貸し農園はほかにもありますが、「マイファーム」の特徴は、初心者でも気軽に利用できる点です。各農園には、農機具や水、肥料なども備えているので、農園利用者はこれらを自分で用意する必要がありません。また、各地の農園を巡回する農園管理スタッフもいて、必要に応じ土作りなどのアドバイスも行なっています。さらに、農園管理スタッフは、水遣りなどの作業も代行しているので、週に1度しか農園に行けないといった人でも安心して畑を借りることができます。
——この事業をはじめられたキッカケを教えてください。
僕は、福井県の出身で、使われずに荒れ放題になった農地を子どもの頃から目にしていて、ずっと「もったいないなと」思っていました。また、食の安全の問題や低い食糧自給率の問題がクローズアップされるようになり、「農業を何とかしないといけない」と考えるようになりました。そんな折、たまたま、貸し農園が人気だということを耳にし、自分でいろいろと調べてみたところ、消費者が自分で農作物作って自分で食べる"自産自消"が拡がれば、耕作放棄地の問題も食の安全の問題も一緒に解決できるかもしれないと思い、貸し農園を事業化しようと考えたのです。
——大学卒業後、1年のサラリーマンを経て起業されました。
ビジネスのアイディアは、大学時代に考えたものですが、実際に事業をするためには営業手法を学ぶ必要があると考え、まずは、就職することにしました。けれど、企業での面接のさい、「やりたいことがあるので3年だけ働かせて欲しい」と言ったらどこも採用してくれなくて、結局、100社受けて通ったのは、1社だけでした。しかも、3年勤めるつもりが1年で辞めることになったので、かなり叱られましたね(笑)。ただ、起業という目的があり、期限付きの就職だったので、その間はかなり集中して仕事をしました。勤めたのは1年ですが、3年分くらい働いたという意識はあります。
——「マイファーム」の利用状況を教えてください。
2007年9月の事業開始から、これまでに延べ約400名の利用がありました。農業体験も含めると、600名ほどが利用したことになります。
利用者は、10歳くらいまでの子どもがいるファミリー層が中心で、"野菜を自給するため"というより、遊園地やショッピングに行く代わりに「マイファーム」に行くという、いわばレジャーの一環として利用している人が多いようです。そのせいか、通常の貸し農園だと家から近いところが好まれますが、「マイファーム」の場合、大阪の人が京都の農園を利用するといった具合に、自宅からの距離に関係なく利用されています。
農業プラスアルファの発想で農業を活性化したい
——貸し農園の候補地となる耕作放棄地はたくさんありますが、そうした情報は、 一般には手に入りにくく、また、仮に情報が手に入っても、農家は保守的な人も多いため、見知らぬ人に土地を貸したがらないのではないですか。
当社では、農家に対し、農作物の販路の紹介や原価計算の導入支援など、農業経営を支援する事業を行なっており、こうしたサービスを利用した農家の経営者から、「どこどこの誰々さんが、歳をとったので農業を辞めたいといっている」といった情報をもらったり、土地の所有者を紹介してもらったりしています。
また、農地の所有者の方に"マイファームに農地を任せてもいい"と思ってもらうためには、信頼関係を築くことが欠かせません。農家の人たちにとって、ぼくたちは、いわばよそ者ですから、心を開いてもらうためには、一緒にごはんを食べるのはもちろん、時には、風呂に入れてもらったりするなど、農家の懐に飛び込むようなお付き合いも心がけています。
——金融危機をキッカケに、農業への関心が高まっています。農業分野への参入企業も増えると思われますが、競争などの心配はありませんか?
これまで農業というのは、ほとんど関心を示されない分野だったので、参入企業が増えることで、農業への関心も高まり、市場も拡大が期待されます。ですから、新規に参入する企業は、フロンティア仲間として歓迎しますよ。
——今後の事業展望をきかせてください。
まずは、都市型農業のあり方として貸し農園の事業を確立したい。具体的な目標としては、「マイファーム」を増やすとともに、座学の講座を開設したいと思います。
「マイファーム」の利用者は、農業の初心者なので、ハイヒールで畑に来る人とか、"鍬を持って"といわれて鎌を持ってしまう人など、農業を知っている人からすればびっくりしてしまうような人もいます。座学の講座では、こうした人たちに農業のイロハを教えたいと思います。
さらに、長期的には、福井県など、田舎の耕作放棄地を利用できる方法を編み出したいと考えています。
田舎の農業を考えるとき、農業だけで採算をとろうと思うと、北海道ぐらいの規模が必要でしょう。それができないのであれば、生産でないところで採算をとる必要があります。つまり、農業プラスアルファの考えが必要で、ぼくらとしては、農業プラスサービス業という方法で何かソリューションが提供できないか、考えているところです。
企業データ
- 企業名
- 株式会社 マイファーム
- Webサイト
- 設立
- 2007年9月
- 所在地
- 〒604-0054 京都府京都市中京区押堀町27−1甍2F
- 連絡先
- TEL:075-211-0621
FAX:075-253-0186
掲載日:2009年5月26日