マンガでわかる「知的財産」

「知的財産(知財)」という言葉を知っていますか?
知的財産とは発明やアイデア、デザインなど、人の知的な、クリエイティブな活動から産まれた「財産的な価値のあるもの」です。そして、その価値を法律で保護した権利を「知的財産権」と言います。音楽や小説などの「著作権」も、知的財産権の一つです。

このような知的財産権のなかで、ビジネス活動に深く関わっているのが、特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つで、「産業財産権」と言います。今回のマンガでわかるシリーズでは、知的財産、この産業財産権についてご説明します。

知的財産権と何か?

知的財産には、発明、デザイン、音楽、小説などがあります。これらの知的財産の本質的な価値は、製品やマーク、CD、本などの目に見える「モノ」ではなく、「財産的な価値をもつ情報」にあります。しかし情報は簡単にマネができたり、コピーできたりしてしまいます。

そこで、知的な創造活動の成果を法律で保護し、一定の「独占権」を与えるようにしたのが「知的財産権」です。音楽・小説・映画等の著作権も知的財産権の一つです。

知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つを「産業財産権」と呼び、特許庁が管理しています。
産業財産権制度では、新しい技術やアイデア、新しいデザイン、ネーミングやロゴマークなどに独占権を与えて保護しています。このことにより、製品開発・研究開発等へのインセンティブを与えて、産業の発展を図ることが目的です。

産業財産権の具体例

それでは、産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)とは、一体どのようなものなのでしょうか。ここではスマートフォンをテーマに、その具体例についてご説明します。


● 特許権(発明)

特許権は、「発明」の権利を保護するものです。特許を受けるためには、新しいものであり、公知の技術から容易に思いつかないものでなくてはなりません。
たとえば、スマートフォンに使われているリチウム電池や5G通信技術に関する発明などがあります。


● 実用新案権(考案)

実用新案権は、製品の形状や構造などに関する「考案」を保護対象にしています。
スマートフォンの例で言うと、携帯性を向上させたスマートフォンカバーの形状に関する考案などがあります。


● 意匠権(デザイン)

意匠権は、製品や商品の「デザイン」の権利を保護するものです。意匠権が認められるためには、新規性や創作性が求められます。 美しく握りやすいスマートフォンのデザインはもちろん、アプリのアイコンのデザインなども意匠権の対象になっています。


● 商標権(ブランド)

商標権の保護対象は、「商品・サービスを区別するために使うマーク」です。マークには、文字(ネーミング)、図形(ロゴマーク)、音(サウンドロゴ)も含まれます。つまり、商標権は自社の商品・サービスの「ブランド」を保護するためのものです。スマートフォンの例では、スマートフォンのブランド名がこれに該当します。
商標は商品・サービス(役務)とセットで出願します。

▼ 産業財産権の保護対象と保護期間

種類 保護対象 保護期間
特許権 自然法則を利用した、新規かつ高度で産業上利用可能な発明 出願から20年(※1)
実用新案権 物品の形状、構造、組合せに関する考案 出願から10年(※2)
意匠権 創作的で美感を有する物品等の形状、模様、色彩等のデザイン 出願から25年(※3)
商標権 商品・サービスを区別するために使用するマーク 登録から10年(10年ごとに更新可)

※1 医薬品等については最長25年まで延長できる場合あり
※2 権利行使のためには、特許庁が発行する実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければならない
※3 2020年3月31日以前の出願は登録から20年

「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で知財を検索

特許庁に登録されている産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)は、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」から、「無料」で検索することができます。自社の知財戦略にぜひ活用してください。


⚫︎ 商標(マーク)を決める時に、登録商標を検索

同じような商品・サービスについて、他社の登録商標と類似した名前を使っていると、「商標権侵害」の警告を受けたり、裁判所に訴えられたりするリスクがあります。
商標(マーク)を決める前に、他社の商標権を侵害していないかを「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で確認するようにしましょう。

商標は、商品・サービスを区別するマークなので、商品・サービス(役務)とセットで出願します。登録商標は、指定された商品・サービスの範囲で独占権が発生します。商品・サービスは、商品34区分・サービス11区分、あわせて45区分に分かれています。

社名についても、一度登録商標で検索してみましょう。社名は「株式会社○○」等のように、単に社名を表すものとして普通に使用する場合は商標権侵害にはなりませんが、社名を商品名やサービス名として使う場合や社名が商品やサービスを連想させる場合には、注意が必要です。
起業にあたって社名を決める時、社名変更をする時には、自社の商品・サービスに関連する分野の登録商標を検索してみることをおすすめします。

商標を登録すると、登録した商品・サービスの範囲で他の人が無断で使えないようになります。商標(マーク)・社名を安心して使い続けるために、商標の登録を検討してみてください。


⚫︎ 競合他社の特許権(実用新案権)・意匠権を調査

自社で開発した製品やデザインが、他社の特許権(実用新案権)・意匠権を侵害していると、警告を受けたり、裁判所に訴えられたりするリスクがあります。
>このようなリスクを未然に防ぐために、製品・デザインの開発にあたっては、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で、特許公報(実用新案公報)・意匠公報を確認するようにしましょう。

競合他社の特許権・意匠権を調査することで、競合他社に対する自社の強みを確認でき、競合他社が手を出していない領域・分野が分かります。また、ライセンス契約先となるパートナーの候補を見つけることもできます。自社の研究開発のヒントにもなります。
また、自社の事業の核となる技術・デザインの新規性について「J-PlatPat」で確認することができたら、特許権・意匠権として権利化をめざしましょう。f

知的財産権取得・活用の効果について

知的財産権(産業財産権)は、幅広い知的創造活動の成果(発明・アイデア・デザイン・ブランド等)について、法律で一定の「独占権」を与えるようにしたものです。知的財産権を取得・活用は、企業の経営力・成長力の向上につながります。


⚫︎「独占」のメリット

知的財産権を取得すると、発明・アイデア・デザイン・ブランドを、他者がマネした場合、差止請求や損害賠償請求を行うことができます。また他者がマネできないため、価格競争を回避することができ、収益性が向上します。自社のブランド価値の維持向上、技術力・オリジナリティのPR効果もあります。


⚫︎「連携」のメリット

他の企業・団体と連携する際に、知的財産権は大きな武器になります。第三者にライセンスを付与してライセンス収入を獲得したり、お互いの特許権を相互で利用しあうクロスライセンスを行ったり、自社以外の知識や技術を活用するオープンイノベーションを推進することにもつながります。


⚫︎「信用」のメリット

知的財産権は、技術やブランドの強みを「見える化」したものと言うこともできます。知的財産権を取得することで、自社の技術力に対する信用性が向上します。金融機関・ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達やM&Aの時に、知的財産権の存在は自社の企業価値の裏付けにもなります。

知財活用をサポートする、様々な支援施策

中小企業・ベンチャー企業の知財活用を支援するために、様々な支援制度が用意されています。
「特許料等の軽減制度」は、中小企業・小規模企業が一定の要件を満たすことで審査請求料・特許料が1/2~1/4に減額される制度です。
中小企業・ベンチャー企業等は、「早期審査・審理」の申請を行うことにより、通常の出願に比べ早期に審査または審理を受けることができます。特許権の場合、審査請求から審査が行われるまで平均約10か月かかりますが、この制度を利用すると平均3か月以下に短縮されます。

「面接」は、出願人・審判請求人や代理人が、審査官または審判官と直接面接して円滑な意思疎通を図り、審査・審判の手続きをより効率的に行うことで、的確な権利取得を支援する制度です。

「巡回審判」は、地方の中小企業等が審判事件の当事者である場合に、当事者の希望に応じて審判合議体が全国各地に赴き、無効審判等の口頭審理を実施する制度です。

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)は、特許庁と連携しながら、特許情報提供、知財情報活用促進、産業財産権相談、知財人材育成などの業務を行っています。INPITの「知財総合支援窓口(知財ポータル)」では、知財関連の支援情報、支援事例、知財人材などを検索することができます。また、スタートアップの知財コミュニティポータルサイト「IP BASE」には、スタートアップ企業・ベンチャー企業の知財戦略に必要な支援情報が集約されています。

その他にも、ミラサポplus「制度ナビ」で「知的財産」のキーワードで検索すると、知財活用をサポートする様々な施策が見つかります。ぜひ、活用してください。