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スマートフォンの「QRコード決済」サービス

スマートフォンを利用したQRコード決済サービスが続々と登場しています。文字情報が含まれたQRコードというマークを媒体にして電子的にお金をやりとりする仕組みです。特別な機器の追加なしに、ゼロコストか、または最小限のコストで導入できるのが利点です。もちろん売上は指定した銀行口座に振り込まれるため、その点は通常の電子マネーやクレジットカードによる決済とほとんど変わりません。
QRコード決済を導入すると、店舗ごとに用意したQRコードを来店客がスマートフォンの専用アプリで読み取って、金額を入力するだけで支払いが完了します。または、来店客のスマートフォンの画面に表示されたQRコードを店舗側のバーコードリーダーで読み取る方法もあります。ここでは、数あるQRコード決済のなかでも手数料の少ないサービスについて、それぞれどのような特徴があるのかご紹介します。

楽天ペイ

楽天ペイのアプリ画面

オンラインモールの楽天が運営する「楽天ペイ」は、店舗で用意したQRコードの読み取り(プリント型)、もしくは利用者のスマートフォンアプリ上に表示したQRコードの読み取り(ワンタイム型)の2通りの決済方法に対応します。決済手数料は後ほど紹介するOrigami Payと同等の3.24%とやや高めに設定されていますが、売上の振込先に楽天銀行を指定している場合は、翌日に手数料なしで入金されるのがメリット。他の銀行を利用している場合でも、翌営業日には入金されるスピーディさがうれしいところです。

QRコード決済以外にも、別途用意されている専用端末を導入することで、クレジットカードだけでなく、Google Payやおサイフケータイ、交通系ICカードなどの電子マネー決済に対応するのも特徴の1つ。一定の決済金額以上の利用があると、専用端末の導入費用分がキャッシュバックされるキャンペーンもあり、事業のスタートから網羅的に決済環境を整えたい店舗にとっては大きな助けとなりそうです。

PayPay

PayPayのアプリ画面

「PayPay」は、ソフトバンクとヤフーが立ち上げたQRコード決済サービスです。2018年12月のサービス開始直後から、購入金額の20%を利用者に還元するキャンペーンを展開し、QRコード決済ブームの立役者となりました。少なくとも2021年9月末まで、決済手数料を無料としているのがお店側にとっては大きなメリットです。入金用の指定銀行口座がジャパンネット銀行の場合、入金手数料が永年無料になるため、最も低いコストで利用できるサービスと言えるでしょう。入金タイミングが早いことによる安心感もあります。

サービス開始時点の決済方法は、店舗で用意したQRコードを、利用者がスマートフォンにインストールした専用アプリで読み取って支払い金額を入力する、という手順がメインとなっています。利用者側には金額入力という手間が必ず発生するので、一定額のものしか販売しない小規模な飲食店ではあまり効率良く運用できない可能性がありそうです。なお、主に中国のユーザーが利用しているAlipayにも対応しています。中国にはすでにQRコード決済の文化があるため、訪日外国人の来店が期待できるお店にもマッチするのではないでしょうか。

LINE Pay

LINE Payのアプリ画面

メッセージングアプリでもあるLINE上で利用可能な決済サービスが「LINE Pay」です。店舗で用意したQRコードの読み取り、もしくは利用者のスマートフォンアプリ上に表示したQRコードの読み取りで決済を行います。前者の場合、利用者が金額を入力する方式のQRコードと、あらかじめ決めた金額の情報を含むQRコードの両方を利用できます。つまり、利用者の金額入力を必要とせず、より簡便に支払えるようにする方法を選べるということです。

決済用の専用端末も用意しているので、店舗側ではスマートフォンを使わずに運用することも可能になっています。2021年7月31日まで決済手数料は無料。それ以降も店舗用アプリや専用端末を使用したQRコード決済は、手数料が販売額の2.45%で、他のサービスより低めに設定されているのも魅力です。店舗のLINEアカウントと連携することで月1000通までのメッセージを配信でき、フォロワーに向けた効果的なPRにもつなげられます。ただし、サービスの仕組み上、利用者は銀行口座からチャージして支払いを行うプリペイド型としての利用が多いと思われます。そのため高額な商品の買い物には使われにくい傾向がありそうです。

Origami Pay

Origami Payのアプリ画面

日本国内でいち早くQRコード決済サービスをスタートさせたのが「Origami Pay」です。店舗で用意したQRコードの読み取り、もしくは利用者のスマートフォンアプリ上に表示したQRコードの読み取りによる決済に対応。導入のための初期費用は不要で、かかるのは決済手数料として一律で販売額の3.25%のみとなっています。

利用者へのメッセージ配信機能が利用できるほか、アプリ内では割引を適用するクーポンの配布や各種キャンペーンなど販促策も積極的に展開。Alipayにも対応するので訪日外国人客向けの決済方法としても最適なサービスと言えます。導入(予定)店舗が全国で10万件に近づく(2018年末時点)など、先行者のメリットを活かしたサービス展開を実現しており、ユーザーの拡大に伴うさらなるニーズの高まりも期待できます。

QRコード決済のメリットとデメリット

特別な機器が不要で、初期コストがゼロに近いため店舗側のリスクを抑えることができ、かつ他の決済方法と容易に共存しながら利用できるのがQRコード決済のメリットです。サービスによっては数年先まで手数料がかからないものもあり、少しでも経営コストを圧縮したい企業や店舗オーナーにとって導入しない理由はない、とまで言い切ることができるかもしれません。

ただし、いずれもスマートフォンアプリが必要なことから、スマートフォンやアプリを持っていない来店客は利用できません。また、インターネットを介したサービスのため、ネットワークやサービスが突然ダウンしてしまうと利用できなくなったり、トラブルに発展したりする可能性があります。したがって、支払い方法をQRコード決済のみに絞るのは事業継続性を考えると時期尚早でしょう。いわばマーケティングツールの1つとして、既存の決済方法と組み合わせて利用するのが良さそうです。

QRコード決済サービス比較表

※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です