ITツール・アプリ紹介
簡単にメニューを多言語化できるネットサービス
2020年の東京オリンピックを控え、訪日外国人の数は年々増え続けています。日本政府観光局の推計によれば、2017年の訪日外国人数は2017年11月の段階で2600万人を超え、年間では3000万人に迫る勢いです。
こうした背景もあり、飲食店において、訪日外国人の来店客は無視できない存在になっていることと思います。むしろ都市圏や観光地のお店では、すでに訪日外国人客が日本人観光客をしのぐ割合になっているところもあるのではないでしょうか。
外国人客に安心してお店を利用してもらうために、必要不可欠なのが外国語で書かれたフードメニューです。しかし、外国語がわからない、新しくメニューをつくっている時間がない、といった理由で用意していないお店もあるかもしれません。
そういうお店でぜひ利用してほしいのが、インターネットを通じて多言語メニューを作成できるサービスです。今回は、英語をはじめ、中国語、韓国語など多数の言語で書かれたメニューを作成できる2つの代表的なサービスを紹介します。
印刷メニューなら“タダ”で作れるiPad対応の「SmartMenu」
日本語、英語を含め、13言語に対応するのが「SmartMenu」です。最大の特長は、メジャーな料理名であれば機械翻訳により自動で各言語に置き換えてくれるところ。場合によっては日本語で料理名を登録していくだけで、すぐに多言語対応メニューができあがります。
自動で(正しく)翻訳されなかった単語でも、利用者が自ら訳語を入力していく「セルフ翻訳」機能を使って、手軽に実用的な多言語メニューに仕上げられるのもポイント。しかもこの機械翻訳やセルフ翻訳で作成したメニューは、(紙にプリントするための)PDFファイルに出力するだけであれば全て無料なのもうれしいところです。
機械翻訳や自力での翻訳が困難な場合は、有償の「クラウド翻訳」を依頼することが可能です。日本語の文字数に応じた料金(ポイント)を支払う形になっていて、日本語100文字の翻訳に1言語あたり500円(500ポイント)かかります。さらに高精度な多言語メニューがほしいときは、別途見積もりによる「プロフェッショナル翻訳」サービスも利用できます。
こうして作成した多言語メニューは先述のとおり言語ごとにPDF化して紙に印刷することが可能。さらにWebサイトとして公開できるほか(サービス運営企業への依頼が必要)、専用iPadアプリで見せることもできます。この場合はお店で用意したiPadにインストールすることになりますが、3台までは無料で、4台目以降はサービス利用料金として1台当たり年間9,800円が必要です。
翻訳の質は問わないから、できるだけコストをかけず、すぐに多言語対応メニューがほしいというお店、あるいはより自然な表現でできるだけ高品質なメニューを用意したいというお店も、この「SmartMenu」が大きな力となってくれるでしょう。
Webベースであらゆるスマホ、タブレットで見せられる「クラウドMENU+」
「クラウドMENU+」は、人力で翻訳された多言語メニューを、iPadに限らずさまざまなデジタルデバイスで見せたいときに便利なサービスです。言語は日本語、英語のほか、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語に対応します。
日本語+英語の「スタンダードプラン」では、1000文字の翻訳サービス付きで初期費用は25,000円、月額料金は1,500円。「言語追加オプション」で中国語、韓国語にも対応し、1言語ごとに初期・月額費用がプラスされる料金体系になっています。ただし、多言語対応の必要がなく、日本語のみでいい場合は無料なので、メニューを単純にデジタル化したい、という用途でも活躍しそうです。
同サービスの面白いところは、サービスを利用するに当たって必要なお店の各種情報登録や、すでに使用しているメニューの文字起こし(データ化)、料理写真の加工・データ登録といった作業を有償で代行してくれること。時間も人も足りなくて、メニュー作成どころかパソコン上でサービスを利用することすらままならないお店でも、気軽に利用できるでしょう。
メニューをアプリ化する機能や仕組みはありませんが、できあがった多言語メニューはWebサイトとしてすぐに公開できるので、iPhone/iPadやAndroidスマートフォン/タブレット、パソコンなどさまざまなデジタルデバイスのWebブラウザで閲覧できます。比較的安価なAndroidタブレットでデジタル化したメニューを利用したい、という向きにもおすすめです。
多言語化する目的やお店の方針によってサービスを選ぶ
「SmartMenu」と「クラウドMENU+」を比較したとき、目立つのは料金の違いかもしれません。しかし、以下のように表にしてみると、料金だけで選ぶのではなく、多言語化したメニューをどのようにお客さんに見せたいかという狙いや目的、あるいは時間や人的リソースの多寡などによって選んだ方がいいことがわかります。
たとえば「SmartMenu」なら、多少手間がかかっても、機械翻訳を使ったり自力で翻訳したりして、お金をほとんどかけずにPDFや紙のメニューにする、といった使い方ができます。その一方で、高精度に翻訳されたメニューをiPadアプリでスタイリッシュに見せたい、という目的にも利用できるので、お店のテイストや経営方針に応じて幅広く対応できるサービスと言えます。
「クラウドMENU+」の場合は、既存の日本語メニューと料理写真さえあれば、ほとんど丸投げする形で多言語メニューを実現できます。したがって、メニューの作成にかかわるあらゆる手間を省きたいお店に向いていると言えるでしょう。
iPadなどのタブレット端末でメニューを見せたいとき、小規模な(端末が3台以内に収まる)お店なら「SmartMenu」が安価に利用できそうです。反対にお店の規模が大きいと、初期費用はかかっても「クラウドMENU+」の方がコストを抑えられるかもしれません。
なお、英語メニューの作成にあたっては、機械翻訳や自力での翻訳、有償の高精度翻訳サービスの利用の有無にかかわらず、「メニュー英語表記例データベース」のようなWebサイトを参考にするのがおすすめです。1つのメニューに複数の表記パターンが存在するケースもあるので、お店や料理の雰囲気に合わせてベストな訳語を選びたいものです。