ビジネスQ&A
第二会社方式という事業再生手法について教えてください。
当社は設立35年の印刷会社ですが、多角化の結果、借入金が増大し業績が悪化しています。現在、借入金の返済にも窮していますが、友人に相談したところ第二会社方式という事業再生の手法があると聞きました。第二会社方式とはどのようなものでしょうか。
回答
「第二会社方式」とは、過剰債務を抱えて経営難に陥っている会社から採算性の良い事業だけを会社分割や事業譲渡によって別会社(第二会社)へ分離することで優良事業の存続を図り、不採算事業・過剰債務とともに残された旧会社を清算などしてしまう事業再生手法です。
「第二会社方式」とは、過剰債務により財政状況の悪化した中小企業から収益性の高い優良な事業だけを別会社(第二会社)へ分離し事業再生を図るとともに、不採算事業・過剰債務が残された旧会社を特別清算してしまう事業再生手法の1つです。
平成21年6月22日に施行された「改正産業活力再生特別措置法」(「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」以下、「改正産活法」)により、第二会社方式による中小企業の事業再生を支援するため「中小企業承継事業再生計画」(第二会社方式による再生計画)を国が認定し、対象企業に各種支援策を与える制度が創設されました。
【「中小企業承継事業再生計画」認定の対象となる企業】
過剰債務を抱えて事業の継続が困難となっている中小企業で、収益性のある優良事業を有している中小企業が対象となります。認定のためには、(1)中小企業再生支援協議会や事業再生ADR、私的整理ガイドラインなど公正な債権者調整プロセスをへて金融機関の合意を得ること、(2)従業員との適切な雇用調整が図られていること、(3)旧会社の取引先の売掛債権を毀損させないことなど、一定の要件が求められています。
【「中小企業承継事業再生計画」認定による支援内容】
1.営業上必要な許認可の承継
認定制度創設前の会社分割などでは、旧会社の許認可の引継ぎがネックとなることがありましたが、認定を受けた場合、必要に応じて旧会社が保有していた許認可(旅館業許可、一般建設業許可、特定建設業許可など)を第二会社が承継できるようになります。
2.税負担の軽減措置
認定されると、第二会社を設立した場合等の登記に係る登録免許税、第二会社に不動産を移転した場合に課される登録免許税が軽減されます。
3.再生に必要な金融支援
第二会社が事業を取得するための対価および設備資金、運転資金などの金融支援を受けることができます。
- 日本政策金融公庫による低利融資制度
- 中小企業信用保険法の特例
- 中小企業投資育成株式会社法の特例
【第二会社方式のメリット】
第二会社方式を活用することで、想定外の債務リスクを遮断できること、税務上の損金算入手続が容易なことから、スポンサーや金融機関の協力が得られやすいというメリットがあります。
また、過剰債務が切り捨てられ優良な事業だけで再生を図るため、再生実現の可能性が高くなるとともに、事業が存続することで地域の雇用確保、取引先への債務履行などが可能になります。
債務過剰で事業の継続をあきらめる前に、自社の事業を見直してください。優良な事業部門がある場合、本スキームを活用することで、事業の継続が可能になるケースがあります。
早めに中小企業診断士などの専門家へ相談してみましょう。
- 回答者
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中小企業診断士 石井 浩一