RoHS指令の基礎

中国RoHS(II)管理規則三つの基本、三つの変化、三つの不変、そして三つの疑問

2016年7月29日

中国RoHS(II)管理規則が7月1日に施行され、多くの質問をいただいております。ご質問の内容は、共通しており、これまでのコラム等で解説した事項が多いのですが、重複しますが論点を改めて解説をします。

1. RoHS(II)管理規則の三つの基本

(1)基本事項

正式名称

电器电子产品有害物质限制使用管理办法 令 第32号*1
2016年1月6日付改訂 1月21日告示

*1

主管部門

工业和信息化部・国家发展和改革委员会・科学技术部・财政部
环境保护部・商务部・海关总署・国家质量监督检验检疫总局

罰則

第19条 本弁法に違反し、下記状況の一つが生じた時は、商務、税関、質検などの部門が、各自の職責の範囲内で処罰する。

摘発された状況により、摘発主管部署や適用する規制法で異なることになります。

施行日

2016年7月1日

但し、特定特性製品の特定化学物質の含有制限日は未定

(2)用語

対象製品

電器電子機器

電流あるいは電磁場により稼動する、あるいは電流および電磁場の生成・運送・測定を目的とする、定格電圧が直流の場合は1,500ボルト以下、交流の場合は1,000ボルト以下の設備および周辺製品を指す。ただし、電力の生産・運送・配分に係わるものは除く。

有害物質

  • 鉛、その化合物;
  • 水銀・その化合物;
  • カドミウム・その化合物;
  • 六価クロム化合物;
  • ポリ臭化ビフェニル(PBB);
  • ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE);
  • 国家が指定するその他有害物質

最大許容濃度はGB/T 26572-2011で規定

カドミウム 0.01wt%  その他 0.1wt%

(3)階層文書構成

RoHS(II)管理規則は部門規章で、上位に法律、行政法規(条例)があります。

上位法:「中華人民共和国清潔生産促進法」、「中華人民共和国固形廃棄物環境汚染防止法」「廃棄電器電子製品回収処理管理条例」

下位規定:国家標準、業界標準

支援文書:FAQ(实施〈电器电子产品有害物质限制使用管理办法〉的常见问题答疑)*2

*2

法規制の文書構造は、EUのニューアプローチ的仕組みになっています。

2. RoHS(II)管理規則の三つの変化

(1)適用範囲

電子情報製品から電器電子製品に拡大されました。「電器」は「電気製品」と訳して、「電気電子製品」でもよいのですが、「電器」は「(白物)家電」の意味合いがありますので、「電器」のままとしました。

RoHS(I)管理規則では、「分類注釈」で約35ページにわたる対象製品リストが告示され、リスト外製品は対象外とされていました。RoHS(II)管理規則では、 FAQのQ12.で「電器電子業界の高速な発展、早いペースで行われる製品の更新やモデルチェンジという特徴、および列挙という形式ではすべての電器電子設備を網羅するのが難しい」として参考資料として使用するリストの位置づけで次の製品が例示されています。(部分記述)

  1. 通信設備
    有線通信および無線通信設備を含む固定またはモバイル通信のアクセス、伝送、スイッチ装置、通信端末設備など。
  2. ラジオ・テレビ設備
    ラジオ・テレビ番組の制作や放送制御装置、ラジオ・テレビの送信や伝送用設備、特定の目的用の専用テレビなど。
  3. コンピューターやその他のOA機器
  4. 家庭用電器電子設備
    家庭用および類似用途の電器電子設備や装置
  5. 電子式計器
    電気工学電子測定機器、電子分析機器、電子カウンターまたはタイマー、電子モニタリング設備や計器など。
  6. 産業用電器電子設備
    加工、生産、検査測定用の電器電子設備、工業系制御システム用監視測定器具
  7. 電動工具
  8. 医療用電子設備や機械
  9. 照明製品
    白熱灯、ハロゲンランプ、蛍光灯、高輝度放電灯、LEDランプなど
  10. 文化・教育、工芸・美術、体育、娯楽用の電子製品
    電子楽器、電子または電気部品を備えた玩具、体育用品、演芸用機材、娯楽用品

電器電子製品はこのように幅広く、EU RoHS指令と一致していますが、EU RoHS指令の第10製品群(自動販売機)が入っていません。

自社の製品がRoHS(II)管理規則の対象製品に該当するかどうかのご質問を多くいただきます。この判定については、FAQのQ13で判定ツリーが用意されています。要約すれば、「定格電圧が直流1,500ボルト以下、交流1,000ボルト以下の設備および周辺製品」で、軍事用などの明確な除外製品でない限り対象製品となります。

ただ、現状では対象製品となっても、EU RoHS指令が要求する特定有害物質の非含有とする義務はなく、SJ/T 11364-2014による表示義務になっています。

(2)施行日

2016年7月1日前に生産した物流在庫の扱いが気になりますが、この解釈がFAQに示されています。

Q5. RoHS(II)管理規則への適合が要求されるのは、製品の生産日なのか、または市場投入日なのか。

A5:C-RoHS(II)の適用製品の適合要求は製品の生産日を基準とする。2016年7月1日およびそれ以降に生産する製品は、RoHS(II)管理規則の要求を満たすよう確実に保証しなければならない。

Q6. 輸入製品のRoHS(II)管理規則の適用は、製品の生産日を基準とするのか。通関時とするのか、市場投入日とするのか。

A6:輸入製品および中国国内製品に対する要求は同一であり、適用実施日はいずれも製品の生産日を基準とする。通関または市場投入日は、実施日には関係しない。

日本から輸出する場合は、装置銘板に記載された生産日が問われることになります。銘板への記載する生産日は、中華人民共和国製品品質法第27条4項で「使用期限のある製品は、目立つ位置にはっきりと製造年月日及び安全使用期限又は失効期限を明記しなければならない。」とされています。オレンジマークと環境保全使用期限の表示はこの要求に該当すると解釈できます。

(3)SJ/T11364-2014(電子電気製品有害物質使用制限標識要求)

2016年7月1日にSJ/T11364-2014が発効し、2006年版は失効しました。
SJ/T11364-2014の標識要求の中で、総則に次が示されています。

  • 電子電気製品有害物質使用制限の標識を表示する。
  • 寸法、材質、機能上の制約等により製品上に直接表示できない場合は、取扱い説明書に記載する。
  • 生産材として購入した電子電気製品は、表示しないことも可能である。
  • この場合は標識に必要な全ての情報を購入側に提供する。
  • 取扱説明書に記載する場合、その媒体として、紙の文書、説明用のディスク(CD/DVD)あるいは包装物を使用することができる。
  • 生産材の電子電気製品の取扱説明書は、ホームページでよい。取扱説明書にはアクセス手順を取扱説明書に明記する。

表示に関する事項は、IT技術の進歩を取り入れた形になりました。

SJ/T 11364-2014で、規範性引用文献にあるGB18455「包装回収標識」を削除しました。GB18455-2001はGB/T18455-2010に改定されましたが、SJ/T11364-2006は規範文書としてGB18455-2001を特定しており、GB/T18455-2010に改定されないままとなっていました。

SJ/T11364-2014により、包装材の表示義務がなくなったのかとご質問を多くいただいています。包装材表示義務については、RoHS(II)管理規則第12条で「無害で生分解しやすく且つ回収利用が便利な材料を使用し、包装物使用に関する国家標準或いは業界標準を遵守しなければならない。」としています。食品の容器包装材は厳しいのですが、電器電子製品などの一般包装については、商務部、環境保護部と工業情報化部で2014年12月22日に「企業グリーン調達ガイドライン」(試行)

この告示の第10条で「企業は、サプライヤーに対して、製品や原材料の包装は、包装材料として有毒、有害物質を非含有とし、リサイクル可能で、生分解性または無害廃棄ができて、過剰包装を避けるなどのグリーン化の要求をすることを奨励する」としています。

従って、GB/T18455-2010の義務は継承することが推奨されます。

3. 三つの不変

(1)含有制限

RoHS(II)管理規則第18条「目標達成目録に記載された電器電子製品は、電器電子製品有害物質制限使用関連の国家標準あるいは業界標準を満たさなければならず、電器電子製品有限物質制限使用合格評価制度で管理される。」とされています。

RoHS(I)管理規則の第2ステップと同様ですが、非含有が要求される目標達成目録や合格評価制度の内容は告示されていません。

(2)含有表示

RoHS(II)管理規則第13条で「電器電子製品の生産者および輸入者は、電器電子製品有害物質制限使用標識に関する国家標準あるいは業界標準に基づき、市場に提供する電器電子製品に含まれた有害物質について表示しなければならず、有害物質の名称およびその含有量、該当有害物質に係わる部品および該当製品の回収利用の可否、不適切な利用あるいは処置した場合の環境・人体健康への影響などを表示しなければならない。」としています。標識に関する国家標準あるいは業界標準がSJ/T11364-2014です。

(3)環境保全使用期限

RoHS(II)管理規則第14条で「電器電子製品の生産者および輸入者は、電器電子製品有害物質制限使用標識に関する国家標準あるいは業界標準に基づき、生産あるいは輸入した電器電子製品に環境保護期限を表示しなければならない。」としています。

RoHS(II)管理規則第15条「電器電子製品の環境保護使用期限は、電器電子製品の生産者あるいは輸入者によって独自に設定される。体積、形状、表面材質或いは機能上の制約で製品上に表示できない時は、製品の説明書の中に明示しなければならない。」としています。

この業界標準がSJ/Z 11388-2009(環境保全使用期限設定手順)で、これまでと変わらず、技術型(実践法・試験法)と概念型(安全使用期限法・技術寿命法・対比法・リスト対照法)が示されています。

環境保全使用期限の開始日は、FAQのQ28で生産日とするとされています。SJ/T11364-2014の6.3項(環境保護使用期限の標識)で「標識の様式は年、年週、年月、年月日などや、または製品のシリアル番号、製品バーコードなど生産日情報が含まれる企業が通常用いる製品標識方法を使用することができる。」とされています。

一方、RoHS(II)管理規則より上位法である中華人民共和国製品品質法の第27条で「製品又はその包装上の表記は必ず真実で、かつ以下に掲げる要求に合致しなければならない。

(4)使用期限のある製品は、目立つ位置にはっきりと製造年月日及び安全使用期限又は失効期限を明記しなければならない。」として、環境保全使用期限のある製品は「製造年月日」の記載を要求しています。

この点について、古いのですが、SJ/T11364-2006のFAQ*4で解説をしています。

*4

Q22:《標識要求》中に、「電子情報製品の生産日は製品の環境保護使用期限が始まる日とする」としていますが、それでは製品には生産日を表示すべきですか。具体的にはどのように表記すべきですか。

A22:《管理規則》と《標識要求》はいずれも製品に生産日を注記する規定を設けていません。但し《管理規則》は製品環境品質安全期限つまり「環境保護使用期限」の概念を取り入れていますので、これは実質的に有毒有害物質または元素を含む電子情報製品に対して「期限付きでの使用」を要求したことになります。《中華人民共和国質量法》(以下《質量法》と略称)第二十七条第(四)款は、「使用期限が限られる製品は、目立つ位置にはっきりと生産日と安全に使用できる期間または失効日を表記しなければならない」と規定しています。この規定に基づいて、《管理規則》の関連要求に結びつけると、有毒有害物質または元素を含む電子情報製品は環境保護使用期限(《質量法》に言及している「安全使用期間」に相当)を表記しなければならない以外に、製品の生産日も表記しなければなりません。また《製品標識の表記規定》第5条と第15条の関連規定に基づいて、生産日は製品または製品の販売用の包装上に印刷しなければならず、表示方法は国家標準の規定に符合しているか、または「年、月、日」によって表示しなければなりません。

有害物質を含有しているオレンジマーク製品は、品質法の第27条で銘板に「製造年月日」を記載し、環境保護使用期限の標識近くには「製造年月」等の標識でよいことになります。

1箇所の表示にする場合は、銘板に「製造年月日」を記載することになります。

4. 三つの疑問

(1)グリーン調達

RoHS(II)管理規則第1条「電器電子製品廃棄後の環境にもたらす汚染を抑制・削減し、電器電子業界の清潔生産および資源総合利用を促進し、グリーン消費を奨励し、環境および人の健康を守るために、「中華人民共和国クリーン生産促進法」、「中華人民共和国固形廃棄物環境汚染防止法」「廃棄電器電子製品回収処理管理条例」等の法律、行政法規に基づき本弁法を制定する。」とされています。

RoHS(II)管理規則では、非含有要求ではなく、含有表示で適合となります。市場に含有製品と非含有製品があれば、非含有製品を優先購入することになるかが疑問となります。

(2)自発的認証制度

2010年8月25日に自発的認証実施規則が告示されました。RoHS(II)管理規則第18条の合格評価制度として、2011年8月国家統一電子情報製品汚染防止自発的認証公告(実施規則:国家统一推行的电子信息产品污染控制自愿性认证)が取り沙汰されています。2015年12月に中国国家认证认可监督管理委员会(Certification and Accreditation Administration of the People's Republic of China: CNCA)が改めて実施規則関連の公告を出しています。実施規則がCNCAと工業情報化部で施行の調整が行われ、これが合格評価制度になるのか疑問となります。

(3)適合宣言と品質システム

2012年7月18日に「企業電子電気製品汚染制御適合性声明規範」(案)*5が公表されました。目的は「徹底的に『電子電気製品による汚染の制御管理規則』(以下、『管理規則』と略す)をより広く実施し、電子電気製品による汚染制御の結果に対して審査制度を確立、電子電気製品による汚染制御の"適合性声明"を規範するため、本基準を制定する。」です。

*5

適合性声明規範では、EUのCEマーキングに類似した適合声明書(DoC)の様式が定められています。適合声明書には、宣言根拠文書の明細が要求されており、EUのCEマーキングの技術文書が想定されます。ただ、 適合性声明とSJ/T11364-2014の表示の関係が明確ではありません。

また、宣言根拠文書には「検査報告」「リスク評価報告(EN50581相当?)」「汚染制御系証明書」「汚染制御管理プログラム文書」「自発的認証証明書」の組み合わせとしています。

「汚染制御系証明書」「汚染制御管理プログラム文書」は、自発的認証実施規則の付録においてISO9001にRoHS(I)管理規則の要求事項を入れた仕組みを要求していると思われます。

2014年10月10日にGB/T31274-2014(電子電気製品における使用制限物質の管理体系 要求事項)が発行され、2015年4月16日から実施されています。GB/T31274はGB/T19001-2008(ISO9001-2008)にRoHS(I)管理規則の要求を入れたものです。

「汚染制御管理プログラム文書」は、GB/T31274になるのか、RoHS(II)管理規則、ISO9001-2015との改訂をするのかなども疑問として残ります。

これらの疑問点は、情報を入手しだい、コラム等でご案内します。

(松浦徹也)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会