RoHS指令の基礎

改正RoHS指令の官報公示(1)

2011年7月8日

現行RoHS指令(2003/95/EC)が改正となり、「電気電子機器の特定有害物質の使用制限に関する2011年6月8日の欧州議会と理事会の指令2011/65/EU」として2011年7月1日に官報で公示されました。

すでに2011年5月27日に欧州理事会で承認されていた改正案の内容が、そのままこの官報公示に反映されています。

以下、指令2011/65/EUの概要を記します。

発効日(第27条)

官報公示から20日後となっており、2011年7月21日に発効します。

目的(第1条)

廃電気電子機器(以降「WEEE」と略称)の環境上の健全な回収と廃棄を含み、人の健康と環境保護に寄与するために電気電子機器(以降「EEE」と略称)に有害物質の使用制限を行うとことを目的としています。

適用範囲(第2条)

附属書Iに記載されている以下のカテゴリーに該当するEEEに適用されます。

  1. 大型家庭用電気製品
  2. 小型家庭用電気製品
  3. 情報および通信装置
  4. 消費者用装置
  5. 照明装置
  6. 電気電子工具
  7. 玩具、レジャーおよびスポーツ装置
  8. 医療機器
  9. 監視および制御機器(産業用の監視および制御機器を含む)
  10. 自動販売機
  11. 上記カテゴリーに含まれないその他のEEE

現行RoHS指令においては適用が除外されていたカテゴリー8、同9に加え、新たにカテゴリー11が追加されました。

現行指令では適用範囲外ですが、新指令には従っていないEEEは第4条(3)および第4条(4)の規定に係らず、2019年7月21日までは継続して上市することができます。

新指令は以下には適用されません。

a.加盟国のセキュリティの基本的な要求を保護するための軍事目的

b.航空宇宙用装置

c.新指令の適用除外もしくは適用範囲外である別の型の装置の一部として特別に設計され、固定される装置で別の装置の一部分として機能し、同じ特別に設計された装置によってのみ置き換えられる装置

d.大型産業用固定工具

e.大型固定装置

f.型が認承されてない電動二輪車両を除く人または貨物用運搬具

g.職業用途以外に利用される非道路用の車両機械

h.能動型移植可能医療装置

i.一般、商業、産業、住宅用に太陽光からエネルギーを生産するため固定され、永久に使用するため専門家により設計、組立、固定されたシステムにおいて使用されるように意図された太陽光パネル

j.B to Bベースでのみ利用可能なR&D目的のために設計された装置

防止(第4条)

  1. 修理、再使用、機能または能力更新のためのケーブルおよび予備部品を含み、上市されるEEEは附属書IIのリスト物質の含有が制限されます。
    新指令の附属書IIの制限物質と均質物質当りの最大許容濃度は、現行指令と同様の6物質です〔鉛:0.1%、水銀:0.1%、カドミウム:0.01%、六価クロム:0.1%、臭素化ビフェニール(PBB):0.1%、臭素化ビフェニルエーテル(PBDE):0.1%〕。
  2. 以下の装置、機器類への制限物質の含有規制の適用は次ぎのとおりです。
    a.医療用装置と監視制御機器は2014年7月22日以降上市分から適用
    b.体外診断医療装置は2016年7月22日以降上市分から適用
    c.産業用監視制御機器は2017年7月22日以降上市分から適用
  3. 以下の場合の修理、再使用、機能または能力更新のためのケーブル、予備部品には均質材料当たりの制限物質の最大許容濃度は適用されません。
    a.2006年7月1日以前に上市されていたEEE
    b.2014年7月22日以前に上市されていた医療用装置
    c.2016年7月22日以前に上市されていた体外診断医療用装置
    d.2014年7月22日以前に上市されていた監視制御機器
    e.2017年7月22日以前に上市されていた産業用監視制御機器
    f.除外から便益を得ており、特定の除外に関する限り、除外期限が終了する前に上市されたEEE
  4. 2006年7月1日以前に上市されたEEEから回収され、2016年7月1日以前に上市された装置に使用されている再使用予備部品が監視可能なクローズドループのB to Bリターンシステムで行われ、消費者に通知されている場合には当該再使用予備部品には制限物質の均質材料当たり最大許容濃度は適用されません。
  5. 制限物質の製品含有除外項目は附属書3と4にリストされています。
    附属書IIIの内容は、2010年9月25日と26日のCommission Decision 2010/571/EUがそのまま継承されています。附属書IVは適用範囲が追加された附属書Iのカテゴリー8と9(医療用装置と監視制御機器)に関連する構成部品等に対する制限物質の含有除外項目です。

科学と技術の進歩への附属書の適合(第5条)

  1. 附属書III、IVに科学と技術の進歩を適用し、第1条に規定された目的を達成するため委員会は第20条に従った専門委員会により、第21条と22条に従って以下の措置を採用しています。
    a.REACH規則による環境と健康の保護を弱めることなく以下の条件に該当する場合、特定のアプリケーションの材料および部品を附属書IIIおよびIVの除外に追加します。
    — 設計変更による除去または代替もしくは附属書IIのリスト中の材料、部品を必要としない材料および部品が科学的、技術的に実行不可能である
    — 代替品の信頼性が確実ではない
    — 代替品に起因する総合的な環境、健康および消費者安全の負のインパクトがそれらの総合的な環境、健康及び消費者安全の便益を上回りそうである
    b.上記a.の条件が実現できない場合、附属書IIIおよびIVのリストからEEEの材料と部品を削除します。
  2. 前項のa.により採用された措置の有効期間は以下のとおりです。
    — 附属書Iのカテゴリー1から7とカテゴリー10および11は最大5年まで
    — 附属書Iのカテゴリー8と9は最大7年まで
    有効期間はケースバイケースで決定され、見直されることもあります。

    附属書IIIにリストされている除外の最長有効期間は以下のとおりです。
    — 附属書Iのカテゴリー1から7および10は2011年7月21日から5年間
    — 付属書Iのカテゴリー8と9は、第4条(3)に規定の該当日から7年間
    付属書IVにリストされている除外の最長有効期間は、第4条(3)に規定する該当日から7年間
  3. 除外の許可、見直し、廃止の申請は付属書VによりEU委員会に対してなされます。
     EU委員会は以下の対応をします。
    受付から15日以内に申請書の受付通知を行い、申請書及び補足書類を加盟国に通知し、その要約を一般に公開する。申請内容とその正当性を評価する。
  4. 除外見直しの申請は除外期限の18カ月前までにしなければなりません。
    EU委員会は、既存の除外期限日の6カ月前までに除外見直し申請の決定をします。既存の除外は、EU委員会により見直し申請の決定が行われるまで有効性が存続します。
  5. 除外見直し申請が拒否または廃止される場合は、その決定から最早で12カ月後、最遅で18カ月後にその除外は終了します。

附属書IIの制限物質のレビューと修正(第6条)

  1. 附属書IIの制限物質のレビューと修正は、2014年7月21日までにEU委員会により行われ、以降は定期的にEU委員会の主導もしくは加盟国による提案書の提出に従って行われます。
    このレビューと修正は、特に、REACH規則との一環性が保たれるべきで、中でもREACH規則の附属書XIVとXVIIが考慮さるべきです。
    附属書IIのレビューと修正のためにEU委員会は、非常に小さなサイズまたは非常に小さな内部または表面構造を持つか、同様な物質グループを含んでいる物質について以下について特別な考慮を行っています。
    a.WEEEの再使用もしくはWEEEから材料をリサイクルするための準備の可能性を含んだEEE廃棄物管理処理中の負のインパクトがあり得る。
    b.用途が与えられ物質の環境中への制御されない、または拡散した放出が生ずるもしくは現状の作業条件でWEEEから材料の再使用、リサイクルもしくは他の処理の準備の過程で、有害な残留物または変形もしくは劣化物質が生じ得る。
    c.WEEE収集又は処理過程に関与している作業者が許容できない暴露にさらされ得る。
    d.より少ない負のインパクトを持つ代替、または代用技術によって置き換えられ得る。
    レビューの期間中、EU委員会は、経済界、リサイクル業者、処理業者、環境組織および被雇用者および消費者組合を含む利害関係団体に相談しなければなりません。
  2. 附属書IIの制限物質または同様物質のグループのレビューと修正のための提案は、少なくとも以下の情報を含むべきです。
    a.提案される制限の詳細で明確な文言
    b.制限に対する言及と科学的なエビデンス
    c.EEEにおける物質または同様物質グループの使用に関する情報
    d.特にWEEE管理操作中の有害な影響と暴露に関する情報
    e.可能な代替品および他の代用物、それらの有用性と信頼性に関する情報
    f.最適な措置としてEU全体で制限を考慮するための正当性
    g.社会経済的評価(判断)

(瀧山 森雄)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会