市場調査データ

バッティングセンター

2025年 3月 7日

野球のバッティングが気軽に楽しめる施設として人気を集めたバッティングセンター。国民的スポーツの人気を受けて20世紀後半には広く一般に普及した。一方、近年は新しい娯楽施設の登場や野球人口の減少、さらに少子化なども重なって閉業を余儀なくされる施設も多く、街からその姿が徐々に消えつつある。20代以上の男女1,000人へのアンケートを通して、現在の利用状況や利用する理由、今後の利用意向を調査した。

1. 現在の利用状況

〈図a〉バッティングセンターの利用状況(n=1,000)
〈図a〉バッティングセンターの利用状況(n=1,000)

現在バッティングセンターをどの程度利用するか、という設問に対しては極めて明瞭な結果が得られた。得票上位の「かつて利用したことがある」が537人(53.7%)、次点の「まだ利用したことがない」が357人(35.7%)で、これらを合わせると894人(89.4%)。実に9割近くの人が、現在は非ユーザーという結果になった。

一方で、「ほぼ毎日利用している」と答えたヘビーなユーザーから、「月に2~3回程度利用している」という定期利用のユーザーまでを合わせても、わずか24人(2.4%)に過ぎない。かつてバッティングセンターを利用した経験があるものの、その後、継続的に通うことがなくなり、現在ではほとんど利用しなくなった人が多いという結果が如実に表れている。

2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

〈図b〉性別・年齢別に見たバッティングセンターの利用状況の内訳(n=1,000)
〈図b〉性別・年齢別に見たバッティングセンターの利用状況の内訳(n=1,000)

現在の利用状況を性別・年齢別で示したのが〈図b〉である。利用経験がある人の割合と現在の利用頻度の両方で、男性のほうが高い結果が得られた。男性の年代別に見ると、年代が上がるほど利用経験率も高くなり、それと反比例するように現在の利用頻度が下がる傾向がある。また、「月に1回程度利用している」「週に2~3回程度利用している」「ほぼ毎日利用している」を合わせた割合は、20代で12.5%、30代で7.4%、40代で6%となっており、若年層ほど現在の利用頻度が高いことが分かる。

一方、女性は「まだ一度も利用したことがない」割合が全体的に高く、特に未経験者(率)が多かったのが20代(66.7%)、30代(55.6%)、60代以上(61.8%)となった。また、「かつて利用したことがある」割合は50代の53.2%が最も高く、年代が下がるにつれて低下している。男女ともに、若年になるほど利用経験率が低くなるという結果になった。

3. 利用の基準

〈図c〉バッティングセンターの利用判断の基準(n=643)
〈図c〉バッティングセンターの利用判断の基準(n=643)

バッティングセンターを利用する際に最も重要な判断基準について尋ねたところ、「家や職場、最寄駅といった生活圏内からの距離」が312人(48.5%)で最多得票となった。仕事帰りや休日など、気が向いたときにすぐに行ける気軽さに魅力を感じる人が多いようだ。その半数程度の得票となったのが「低価格」の145人(22.6%)で、さらに「ピッチングマシンの性能」の48人(7.5%)、「夜遅くまでやっている」の42人(6.5%)と、性能や利便性を求める声が続いた。

4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳

〈図d〉性別・年齢別に見たバッティングセンターの利用の基準の内訳(n=643)
〈図d〉性別・年齢別に見たバッティングセンターの利用の基準の内訳(n=643)

利用判断の基準を性別・年齢別に見ると、それほど大きな違いは見受けられなかったものの、わずかながら差異が見られた。まず女性は、全体的に「家や職場、最寄駅といった生活圏内からの距離」を重視する傾向があり、加えて50代と60代以上では「接客面を含む居心地の良さ」を挙げる人も目立った。一方、男性は全年代で「ピッチングマシンの性能」を求める人が多く、野球の競技者や経験者がよく利用していると推測される。さらに、若年から中年層では「低価格」に魅力を感じる人が多いことも見て取れる。

5. 利用にかける費用

〈図e〉バッティングセンター1回の利用にかける費用(n=643)
〈図e〉バッティングセンター1回の利用にかける費用(n=643)

バッティングセンター1回の利用で使用するおおよその金額を聞いた設問で、最も多かった回答が「1,000円未満」の393人(61.1%)で、「1,000円~2,000円未満」の208人(32.3%)がそれに続いた。これら2つの回答を合わせると601人となり、実に93.5%を占めた。性別・年齢別に見てもこれとほぼ同様の結果だった。補足するならば、1回の利用で3,000円以上を使う高額ユーザーが17人(2.6%)いるが、それらは全て30代以上の男性であったことである。

6. 利用する理由

〈図f〉バッティングセンターを利用する理由(n=643)
〈図f〉バッティングセンターを利用する理由(n=643)

バッティングセンターを利用する理由については、最も多い回答が「ストレス発散のため」の265人(41.2%)であり、バッティングセンターが精神的なリフレッシュやストレス解消の場として利用されていることが分かる。「気軽に利用できるため」という理由も多く、168人(26.1%)が選んでいる。特別な準備が不要で、思い立ったときにすぐ利用できるという手軽さが、多くの利用者にとって魅力となっているようだ。3位の「子どもにバッティングをさせるため」60人(9.3%)は、特に女性に多く見られた回答で、子どものために、あるいは子どもと一緒に利用したいというファミリー層のニーズが見える。

7. 今後の利用意向

〈図g〉バッティングセンターの今後の利用意向(n=1,000)
〈図g〉バッティングセンターの今後の利用意向(n=1,000)

バッティングセンターの今後の利用意向について、最も多かったのは「どちらとも言えない」の324人(32.4%)だった。前向きな「ぜひ利用したい」の97人(9.7%)と「どちらかと言えば利用したい」の248人(24.8%)を合わせると345人(34.5%)で、反対に「あまり利用したくない」の129人(12.9%)と「全く利用したくない」の202人(20.2%)を合わせると331人(33.1%)。前向き、どちらでもない、消極的がそれぞれ3分の1程度ずつに分かれる結果となった。

記述式の自由回答では、前向きな声としては「ストレス発散のため」「気軽に運動できるから」「子どもも大人も楽しめるから」など、前述の利用理由と同じような回答が中心となった。他方、消極的な理由としては、「(野球やバッティングに)興味がないから」「近くにないから」「一緒に行ってくれる人がいないから」などが目立った。

8. 性別・年齢別の今後の利用意向

〈図h〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)
〈図h〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)

バッティングセンターの利用意向を性別・年齢別に示したのが〈図h〉である。「全く利用したくない」と「あまり利用したくない」を合わせた割合は、全体的に女性の方が多くなっている。しかしながら、30代女性と40代女性に関しては「ぜひ利用したい」と「どちらかと言えば利用したい」を合わせた割合も35~45%程度となっている。

女性から寄せられた記述式の自由回答には、「打てたら気持ちよさそうだけれど、一人だと恥ずかしい、怖い」「打ち方を教えてくれる人がほしい」「どんな雰囲気なのか分からないので不安」などが多く見られた。経験者のサポートがあれば試してみたいと考える女性も、一定数はいるようだ。

9. まとめ(ビジネス領域としてのバッティングセンター)

バッティングセンターの利用者の大部分が「年に数回程度」や「かつて利用したことがある」に集中しており、日常的な娯楽というよりも、非日常的なスポット利用として位置づけられていることが分かる。未経験者の割合も一定数おり、マーケット自体にはまだ拡大の余地があると思われる。

コアなターゲットとなるのは、やはり20~40代の男性である。ストレス発散や手軽さを求める利用者が多いことから、この層のニーズを中心に据えたサービスの展開が有望だろう。スポーツ感覚だけでなく「ストレス解消型エンターテインメント」としての訴求や、仕事帰りや休日の利用を促進するため、ナイトプランや定額制プラン(サブスクリプション)の導入も一考の価値がある。

また、潜在顧客層としては、20~40代女性やファミリー層(親子利用)がある。女性も利用しやすいような清潔さの維持はもちろんのこと、レディースデーや親子デーの実施、SNS映えするようなデザイン性のある施設や写真スポットの設置、あるいは親子で楽しめるイベントやワークショップの開催なども有用だろう。従来のバッティングセンターのイメージから脱却して、エンターテインメントを提供するという視点でビジネスモデルを新しく構築することが、成功の第一歩になるかもしれない。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2024年11月3日〜11月11日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2025年3月

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