2026年 4月 8日

料亭・懐石料理店は、祝い事などのハレの日の会食や重要な商談の場として、和食の味とおもてなしを提供してきた。一般的に料金が高価格帯であることから日常的な利用は限られるものの、特別な場面にふさわしい空間として現在も一定の需要を維持している。一方で、高級志向の和食市場は、後継者不足や宴会需要の減少といった課題も抱えている。こうした状況を踏まえ、料亭・懐石料理店の利用実態と今後の利用意向を把握するため、20代以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を実施した。

1. 現在の利用状況

〈図a〉料亭・懐石料理店の利用状況(n=1,000)
〈図a〉料亭・懐石料理店の利用状況(n=1,000)

料亭・懐石料理店の利用状況についてたずねたところ、「一度も利用したことがない」と回答した人が457人(45.7%)と最も多く、半数近くが未経験者であることが分かった。次いで多かったのは「過去には利用していたが、現在は利用していない」の262人(26.2%)で、これらを合わせた現在の非利用者は719人(71.9%)に上る。一方、現在も利用している人は281人(28.1%)にとどまり、「半年に1回程度以上」訪れる定期的な利用者は59人(5.9%)と、少数派であることが明らかになった。

2.性別・年齢別に見た利用状況の内訳

〈図b〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店の利用状況の内訳(n=1,000)
〈図b〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店の利用状況の内訳(n=1,000)

性別・年齢別に利用状況を見ると、女性は年代が上がるにつれて利用経験者の割合が増加する傾向が見られた。ただし、その多くは「過去には利用していたが、現在は利用していない」層の増加によるもので、継続的な利用に結びついていないケースが多いことがうかがえる。

一方、現在の利用者に注目すると、男女で異なる傾向が見られる。女性は年代が上がるほど利用者割合が高まるのに対し、男性は50代まで減少傾向が続く。ただし、60代以上の男性は利用率が最も高く、「半年に1回程度」や「月に1回程度」といった定期的な利用者が多い点が特徴的である。

3.利用の基準(現在の利用者および過去の利用経験者)

〈図c〉料亭・懐石料理店の利用判断の基準(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)
〈図c〉料亭・懐石料理店の利用判断の基準(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)

料亭・懐石料理店を「現在利用している」「過去に利用したことがある」と回答した543人を対象に、利用時の判断基準を聞いたところ、「料理のおいしさ、味の好み」が235人(43.3%)と突出して多かった。次いで「予算に合っているかどうか」(97人、17.9%)、「店舗の雰囲気やしつらえ」(87人、16.0%)、「個室の有無」(55人、10.1%)が続き、これら上位4項目で全体の87.3%を占めた。立地条件や従業員のサービス、ネット上の口コミなどは、相対的に重視されにくい結果となっている。

4.性別・年齢別に見た利用の基準の内訳(現在の利用者および過去の利用経験者)

〈図d〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店の利用の基準の内訳(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)
〈図d〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店の利用の基準の内訳(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)

料亭・懐石料理店を選ぶ際の基準を、性別・年齢別に示したのが〈図d〉である。「料理のおいしさ、味の好み」は特に女性で重視される傾向が強く、40代女性では半数以上がこの項目を選択している。30代・50代・60代の女性でも同様に高い割合を示した。一方、男性は「予算」や「店舗の雰囲気」を重視する傾向が強く、「予算に合っているかどうか」は20代を除くすべての年代で約2割の支持を集めた。また、「個室の有無」は男女・年代を問わず一定数の支持があり、料亭・懐石料理店に求められる基本要素であることが分かる。

5.利用にかける費用(現在の利用者および過去の利用経験者)

〈図e〉料亭・懐石料理店1回の利用にかける費用(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)
〈図e〉料亭・懐石料理店1回の利用にかける費用(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)

1回あたりの利用金額については、金額が高くなるほど利用者の割合が減少する明確な傾向が見られた。「1万円未満」が226人(41.6%)と最多であったが、「1万円以上」を支払っている人も6割近くおり、料亭・懐石料理店では一定の高額支出を許容する層が存在することが示唆される。また、「2万円以上」の利用者は58人(10.7%)と少数ながら、料理やサービスの質に対して価格をいとわない高級志向層も一定数確認できた。

6.性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(現在の利用者および過去の利用経験者)

〈図f〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店1回の利用にかける費用(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)
〈図f〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店1回の利用にかける費用(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)

料亭・懐石料理店1回の利用にかける金額を性別・年齢別に見ると、男性の方が1回あたりの利用金額が高い傾向が明確である。「1万円未満」はすべての年代で女性の割合が高く、「1万5,000円以上」の価格帯では男性が女性を上回った。年齢別では、男性は若年層ほど高価格帯を選ぶ割合が高く、女性は40代以降でほぼ同水準となり、「1万円未満」が半数近くを占めている。

7.利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)

〈図g〉料亭・懐石料理店を利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)
〈図g〉料亭・懐石料理店を利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)

料亭・懐石料理店の利用理由として最も多かったのは、「特別な日の食事を演出するため」で339人(62.4%)と圧倒的であった。アンケート項目に設けた記述式の自由回答からは、七五三や入学・卒業祝い、長寿祝いなど、親族が集まる場面での利用が多いことが読み取れる。次いで「おいしい料理が味わえるから」の105人(19.3%)、「仕事上の接待や会食のため」の55人(10.1%)が続き、ビジネス利用は全体の約1割にとどまった。

8.性別・年齢別に見た利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)

〈図h〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店を利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)
〈図h〉性別・年齢別に見た料亭・懐石料理店を利用する理由(現在の利用者および過去の利用経験者)(n=543)

性別・年齢別の結果を見ると、前項で最多回答だった「特別な日の食事を演出するため」は女性で支持が高く、特に30~50代で顕著である。男性も全年代で5割前後の人がこの項目を選んでいるが、その割合は女性より低い。一方で「おいしい料理が味わえるから」や「仕事上の接待や会食のため」を挙げる割合が女性より高く、前者は20~35%程度を、後者は10~15%程度を占めた。

9. 今後の利用意向

〈図i〉料亭・懐石料理店の今後の利用意向(n=1,000)
〈図i〉料亭・懐石料理店の今後の利用意向(n=1,000)

アンケートの全対象者1,000人に今後の利用意向を聞いたところ、最も多かったのは「どちらとも言えない」の296人(29.6%)で、全体の約3割を占めた。残る約7割については、利用に肯定的な385人(38.5%)と、反対に消極的な319人(31.9%)に分かれた。

「1.現在の利用状況」において、「年に1回程度以上」の利用者が12.4%だったことを考慮すると、4割近くの人が前向きな意向を示した結果は注目すべきものと言える。記述式の自由回答を見ると、マナーやコストパフォーマンスの面から利用しづらいという印象を持つ人がいる一方で、ハレの日や接待には欠かせないという普遍的なニーズも根強い。

10.性別・年齢別に見た今後の利用意向

〈図j〉性別・年齢別に見た今後の利用意向(n=1,000)
〈図j〉性別・年齢別に見た今後の利用意向(n=1,000)

今後の利用意向を性別・年齢別に示したのが〈図j〉である。男女別では、女性の方が利用に前向きな回答が多く、男性は「全く利用したくない」の割合がやや高い。ただし、「どちらとも言えない」は性別・年代を問わず2~3割は存在している。この層へのアプローチも、料亭・懐石料理店を成功させるひとつの鍵になりそうである。

11.まとめ(ビジネス領域としての料亭・懐石料理店)

今回の調査から、料亭・懐石料理店の利用傾向は比較的明確で、全体像を把握しやすい結果となった。利用頻度については、頻度が高くなるほど利用者数が減少し、1回あたりの利用料金についても金額が高くなるにつれて利用者が減る傾向が見られる。価格帯と利用頻度の関係は明確であり、日常使いよりも目的性の高い利用に適した業態であることが分かる。

利用目的は、性別や年代を問わず、「ハレの日の会食」「仕事上の商談・会食」「和食を楽しむこと」の3つに集約され、それ以外の理由は少数にとどまった。このことから、料亭・懐石料理店は来店動機やニーズが明確で、店舗の方向性を定めやすいジャンルであると言える。

一方、自由記述からは、コストパフォーマンスやマナー、格式の高さに対する不安が来店の障壁となっている様子も見受けられた。今後は、伝統や格式を重視するのか、もしくは利用しやすさを打ち出すのかといった方針を明確にしたうえで、地域の中での役割やポジションを定めていくことが、長く支持される店づくりにつながるだろう。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2025年7月5日~9月27日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2026年3月