省エネQ&A
ポンプや送風機の回転速度調整による省エネとは?(その4)
回答
これまで、(その1)から(その3)で、ポンプの回転速度調整による省エネについて記してきました。今回は送風機の回転速度調整による省エネについて記します。
1.ダンパー調整と回転速度調整による省エネの違い
送風機により送られる気体の風量は、従来の方法では、ダクト(送風用管)の途中などに取り付けられるダンパーにより調整されます。
図1は、ダンパーによる調整と回転数による調整との省エネ効果の違いを示しています。 曲線Aは送風機の特性を、曲線Bは定格運転時の送風抵抗を表しています。定格では交点のP1が運転点となります。(注)
(注) 横軸、縦軸の単位〔p.u.〕はPer Unitの略で、それぞれ定格時の風量Q1を1、定格時の風圧h1を1としたときの数値の単位です。
ここで、風量をαまで絞ることを想定し、ダンパーで調整する場合と送風機の回転速度で調整する場合の比較をします。
(1) ダンパーで調整(従来の方法)
送風抵抗曲線はB'になり、送風機の特性曲線Aとの交点はP2になります。このときの送風機動力は0、α、P2、h2で囲まれた面積で表せます。
(2) 回転速度で調整
インバータを用い、回転速度を調整し、風量がαになるときの送風機の特性曲線はA'になります。このときの送風機動力は0、α、P3、h3で囲まれた面積で表せます。
(3) ダンパー調整と回転速度調整の比較
(1) で囲まれた面積と(2) で囲まれた面積の差が、流量調整の手段をダンパーから回転速度調整に変えた場合の動力削減効果になります。これは、h3、P3、P2、h2で囲まれた網掛けの部分になります。
以上から、風量を調整するのにダンパーによる場合と回転速度による場合について、風量、風圧からなる運転点の決まり方とその運転点での送風機の動力の違いがわかります。
2.回転数調整による動力の削減
送風機の回転速度と送風機の動力の関係を整理します。
送風機について回転速度を変えた場合の各種特性は次のような関係になります。
n : 送風機の回転速度[min-1]
Q : 風量[立方メートル/min]
H : 圧力[MPa]
P : 送風機のモータ駆動力[kW]
η : 送風機効率
とすると、
Q ∝ n 、H ∝ nの2乗 ... ①
です。
一方、駆動力は
P = (H・Q)/η
ですから
P ∝ n3、P ∝ Qの3乗 ... ②
と、モータの駆動力が送風機の回転速度、あるいは風量の3乗に比例する関係があります。
この関係を示したものが図2の曲線のうち、「理想曲線」です。
この図から、風量を100%から下げたときに、「可変速電動機」は従来の「ダンパ」による流量調整にくらべ、軸動力が大幅に下がっていることがわかります。
3.省エネ効果計算例
(1) 改善内容(例)
工場の乾燥工程で37kWの排風機を使用し、その風量をダンパーで75%に調整しています。省エネ対策として、ダンパーの使用は止め(全開とし)、排風機のモータにインバーターを取り付け、回転速度を落とすことにより風量を75%に調整することを検討します。
以下でこの場合の電力使用量の低減効果を求めます。
(2) 前提条件
排風機モータ : 37kW
排風機風量 : ダンパー性能表によりダンパー開度から75%の風量と推定しました。
運転時間 : 24時間/日で300日/年から7200 h/年
電気料金総合単価(基本料金込み): 20円/kWh
(3) 年間使用電力量の計算
a) 現状のダンパーによる風量調整
図2から、ダンパー(遠心)で風量75%にしたときの軸動力比は92%となります。 このときのモータの効率を91.5%とします。
年間使用電力量
=モータ定格出力37kW×軸動力比k1 0.92÷モータ効率η1 0.915×7200 h/年
=268 000 kWh/年 ... ③
b) 回転速度による風量調整
式②から、軸動力は風量の3乗に比例するので、0.75の3乗=0.42となります。図2の「理想曲線」からも、風量が75%のときの軸動力が42%であることが確認できます。ここでは、実機のデータである「可変速電動機」の曲線から読める軸動力43%を使って計算します。 このときのモータの効率はインバーターによるロスを含み83.0%とします。
年間使用電力量
=モータ定格出力37kW×軸動力比k2 0.43÷モータ効率η2 0.830×7200 h/年
=138 000 kWh/年 ... ④
(4) 削減率
(3) から年間使用電力量の削減率は
となります。
(5) 効果金額
③、④から
( 268 000-138 000 ) kWh/年×20円/kWh
=2 600千円/年
となります。
4.留意事項
(その3)で記したポンプの実揚程と同様に、送風機についても、風量にかかわらず一定の抵抗がある場合は注意が必要です。
ダクトによる管路の抵抗Hは通常、式①から
H ∝ Q2 ... ⑤
すなわち、風量の2乗に比例します。これは図3のRdにあたります。
これとは別に、風量にかかわらず一定の圧力を受ける場合もあります。一定の水深から空気を吹き出させる曝気ブロワなどの場合です。この一定の圧力は、図3の固定抵抗Rsが相当します。
このときの全体抵抗は図3のRcのようになります。
このように固定抵抗がある場合に省エネ効果を計算するには、全体抵抗Rcから固定抵抗Rsを減じた2乗抵抗Rdが式⑤のように風量の2乗に比例する、として計算することになります。
【参考文献】
1) 新訂エネルギー管理技術 電気管理編、(財)省エネルギーセンター、2010、p.453
2) 尾形俊輔編著、改訂 ファン・ブロワ、(財)省エネルギーセンター、2003、p.147、p.10、p.11
- 回答者
-
エネルギー管理士 本橋 孝久