省エネQ&A
冷暖房時の外気負荷と全熱交換器の運転モードの使い分けについて教えてください。
回答
換気によって失われる空調エネルギーの全熱を回収する装置が全熱交換器です。全熱交換器を使用することで、ビルや住宅の空気質確保と、省エネルギー性の両立を図ることができます。全熱交換器の運転方法には、空調運転時に稼働する全熱交換運転と空調運転をしない時に稼働する普通換気運転が有り、使い分けが必要です。
室内をある一定の温湿度に保つために空気から取り除くべき熱量、または空気に供給すべき熱量のことを「冷暖房負荷」と呼び、空調機を選定する際の基準となります。そして、「冷房負荷」と「暖房負荷」は下表のとおり分類されます(出典: 三菱電機(株):ロスナイ技術資料)。
ここで、「外気負荷」とは、換気のために室内に取り入れる外気を室内の温湿度に保つための負荷のことで、冷房期には外気を室内温湿度まで冷却・滅湿するための熱量であり、暖房期には外気を室内温湿度まで加熱・加湿するための熱量です。その割合は、一般事務所ビルを例に挙げると、上図のとおり、冷房期で33.8%、暖房期で41.9%にも達します。
換気によって失われる空調エネルギーの全熱(顕熱=温度と潜熱=湿度)を交換回収する装置が全熱交換器です。
換気不足によるシックハウス症候群の発生対策として、2003年改正の建築基準法により、住宅、学校、オフィス、病院等全ての建築物の居室に対し常時換気設備の設置が義務付けられました。この換気に対して、全熱交換器を使用することで、ビルや住宅の空気質確保と、省エネルギー性(出典:東京都環境局:中小規模事業所の省エネルギー対策テキスト 暖房期のイメージ)の両立を図ることができます。
全熱交換器の運転方法には、空調運転時に稼働する全熱交換運転と空調運転をしない時に稼働する普通換気運転が有ります(出典:東京都環境局:中小規模事業所の省エネルギー対策テキスト)。冷暖房期(夏・冬)には、全熱交換運転を行うことで省エネとなりますが、中間期(春・秋)の外気が室温よりも低い又は高い場合には普通換気運転(全熱交換器を通さない)にすることで、外気冷房(暖房)の効果が表れ、より省エネ効果が得られます。メーカーの資料によると、外気温度に合わせて「全熱交換運転と普通換気運転」を自動切換することで、空調負荷(空調電力使用量)を約6%が削減出来ると言われています。
なお、サーバー室や電気室など人の出入りが殆ど無い室内では、冷房運転時は全熱交換器を停止することが省エネとなります(外気を導入することは増エネとなります)。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均