省エネQ&A
サーバー室や電気室の省エネ(室内機風量を“強”にすることによる冷凍サイクルの効率改善)について教えてください。
回答
通常、無人であるサーバー室や電気室では室内機風量を“強”にすることで、冷凍サイクルの効率改善が図られ、省エネが実現できます。室内機には送風機しかなく、送風機を“強”運転しても省エネへの影響は少ないため、ご家庭での室内機の運転にも応用でき省エネを享受できます。
サーバー室や電気室は、通常、無人であることから、室内機を強風にすることによる不快感や騒音を気にする必要もありません。そこで、サーバー室や電気室では室内機風量を“強”にすることで、冷凍サイクルの効率改善が図られ、省エネが実現できます。
以下、室内機の風量を“強”にすることによる省エネ率を求めます。
下図は設計条件(冷房負荷が100%で、蒸発器での風量も“強”のとき)での蒸発器での冷媒の蒸発温度と室内空気温度との温度分布の一例です。
いま、中間期など実際の冷房負荷が設計負荷の2/3であるときの、対応方法として、1. 蒸発器での風量を“弱(=“強”風量の2/3)”としたときと、2. 蒸発器での風量を“強“のままとしたときの蒸発温度を求めてみます。
項目 |
単位 |
設計条件 |
対応方法1. |
対応方法2. |
---|---|---|---|---|
負荷(熱交換量) |
% |
100 |
67 |
67 |
蒸発器風量 |
% |
100 |
67 |
100 |
空気入口温度(注1) |
℃ |
26 |
26 |
26 |
空気出口温度 |
℃ |
15 |
15(注2) |
18.7(注6) |
対数平均温度差(注3) |
℃ |
14.8 |
9.87(注4) |
9.87(注4) |
蒸発温度 |
℃ |
5 |
9.6(注5) |
12.0(注5) |
注1:蒸発器に入る空気入口温度はサーバー室や電気室の負荷(サーバー室や電気室設備の発熱)により決定される温度で、同一温度です。
注2:負荷(熱交換量)=蒸発器風量×空気の比熱×(空気入口温度—空気出口温度)の熱収支から、空気出口温度は設計条件と同じです。
注3:対数平均温度差とは、熱交換器など伝熱の分野で用いられる温度差です。熱交換器の両端における高温流体と低温流体の温度差を用いて定義され、通常の温度差と同様、対数平均温度差が大きいほど伝熱量も大きくなります。上図による対数平均温度(LMTD)は、LMTD=(△t1—△t2)÷ln(△t1/△t2)で表されます。
注4:負荷(熱交換量)=熱伝達係数×伝熱面積×対数平均温度差の伝熱量から、熱伝達係数と伝熱面積が設計条件と変わらないとして、対数平均温度差を求めています。
注5:空気入口温度、空気出口温度と対数平均温度差から、蒸発温度を求めています。
注6:設計条件から負荷が2/3に減り、蒸発器風量は同じであることから、空気出口温度を求めています[=26-(26-15)×2/3]。
上表のとおり、負荷が下がっても蒸発風量を“強”のままとすることで、蒸発温度を上げることができます。そして、蒸発温度を上げると圧縮機で冷媒圧縮に要するエネルギーを抑える(=高効率な運転)ことができます。
COPの向上率は蒸発温度を1℃上げることで、(全断熱圧縮効率の影響を考慮すると)3.5%程度改善するといわれて言ますので、本事例では、8.4%[=3.5×(12-9.6)]の省エネ効果が期待できます。
一般的に、空調機の消費電力は90%が圧縮機で、残り10%が送風機です。室内機には送風機しかなく、送風機を”強”運転しても省エネへの影響は少ないのです。この事実を知ると、ご家庭での室内機の運転にも応用でき省エネを享受できます。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均