省エネQ&A
省エネ法での電力の1次エネルギー換算係数の算出根拠は?
回答
省エネ法の電力の1次エネルギー換算は、昼夜別の熱効率(需要端)の平成15年度実績値を基に、一次エネルギー換算値を有効数字3ケタで丸めたものです。なお、電力の1次エネルギー換算係数が火力発電所の熱効率だけから算出している理由は、省エネ法が「化石燃料」の合理化を対象としているためです。
省エネ法施行規則の別表第3では、電力の1次エネルギー換算係数として、昼間(8時~22時)を9,970kJ/kWh、夜間(22時~翌8時)を9,280kJ/kWhと定めています。また、資源エネルギー庁のホームページでは「エネルギー使用量(原油換算値)簡易計算表」を公開し、電気事業者の昼間買電として9.97GJ/千kWh、夜間買電として9.28GJ/千kWh、上記以外の買電として9.76GJ/千kWhを規定しています。
下図は、東京電力を例として発電所から需要家に届くまでの供給体系を模式化しています(出典:電気事業連合会作成 電気事業のデータベース)。
東京電力などの一般電気事業者は、火力発電所、水力発電所、原子力発電所など多様な発電所を所有し、発電所で発電した電気を送電線、変電所、変圧器を経由して、需要家に送り届けています。
省エネ法では、工場やビルが使用するエネルギーの熱量は1次エネルギー換算の使用量とし、電気についても同様な取り扱いとしています。このため、電気については、電気の受電端における火力発電所の熱効率をもとに算出された換算係数を使用することにしています。
電気事業連合会作成の平成17年9月7日付の資料(電力の一次エネルギー換算について)には、昼夜別の熱効率(需要端)の平成15年度実績値が記載されています(下表)。
|
全日 |
昼間(8~22時) |
夜間(22~8時) |
---|---|---|---|
発電端効率 |
40.85% |
40.44% |
41.92% |
総合損失率 |
9.7% |
10.7% |
7.5% |
所内率 |
4.5% |
4.6% |
4.3% |
送配電損失率 |
5.3% |
6.3% |
3.2% |
変電所内電力率 |
0.13% |
0.13% |
0.13% |
需要端熱効率 |
36.90% |
36.10% |
38.78% |
一次エネルギー換算値 |
9757 |
9972 |
9282 |
この表の数値をもとに、昼間(8時~22時)の電力の1次エネルギー換算係数を求めると、
受電端発電効率=発電端効率×(1—所内率)×(1-送配電損失率)×(1-変電所内電力率)
=40.44×(1-0.046)×(1-0.063)×(1-0.0013)
=36.1%
1kWhの物理量は3.6MJ(3,600kJ)ですから、電力量1kWhの受電端での1次エネルギー量は昼間の電力量1kWhの1次エネルギー量=3,600kJ÷0.361=9,972kJ/kWhと求められます。
夜間と全日についても同様の考え方で求められます。
つまり、省エネ法の電力の1次エネルギー換算は上表の一次エネルギー換算値を有効数字3ケタで丸めたものであると言えます。なお、
- 電力の1次エネルギー換算係数が火力発電所の熱効率だけから算出している理由は、省エネ法が「化石燃料」の合理化を対象としているためです。
- 昼間と夜間の電力の1次エネルギー換算係数の差は運用する発電所の発電効率の違いによるものです。すなわち、需要の少ない夜間には発電効率で劣る旧式の発電所を停止しているためです。
- 電力の1次エネルギー換算係数は火力発電所の発電効率や総合損失率により変化します。わが国の火力発電所の発電効率は年々向上し、総合損失率は年々減少しているため(出典:電気事業連合会作成 電気事業のデータベース)、電力の1次エネルギー換算係数が改訂されることもあり得ます。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均