省エネQ&A

「工場等」の判断基準に基づく個別管理標準作成上の留意点─(1)燃料の燃焼の合理化

回答

「工場等」の判断基準の「(1)燃料の燃焼の合理化」を取り上げ、「該当する設備」、「管理内容と補足説明」と「個別管理標準を作成する上での留意点」について解説しています。

既にご説明の通り、省エネ法での「判断基準」は省エネルギーを推進するための着眼点が書かれており、省エネにこれから取り組む事業者であっても、省エネを「やりつくした」感を持たれる事業者にとっても極めて有用です。

今回以降、「工場等」の判断基準に基づく個別管理標準作成上の留意点について、順次ご説明を行います。

1回目は、「工場等」の判断基準の「(1)燃料の燃焼の合理化」を取り上げます。

I. 「工場等」の判断基準の「(1)燃料の燃焼の合理化」に該当する設備

関東経済産業局のホームページ上で例示されている設備は、下記のとおりです。

蒸気ボイラー、空調用吸収式冷凍機(燃料)、ヒートポンプ式エアコン(GHP)、給湯設備(燃料焚温水ヒータ)、自家発電設備(ディーゼルエンジン、ガスタービン型)、コージェネレーション(ディーゼルエンジン、ガスタービン型)、構内車両、燃料を熱エネルギー源とする加熱(溶解、熱処理、加熱)/乾燥設備

II. 「工場等」の判断基準での管理内容と補足説明

「工場等」の判断基準の「(1)燃料の燃焼の合理化」の1. 管理として規定されている項目は、アからエの4項目で、下記のとおりです。

ア.
燃料の燃焼の管理は、燃料の燃焼を行う設備(以下「燃焼設備」という。)及び使用する燃料の種類に応じて、空気比についての管理標準を設定して行うこと。

イ.
ア. の管理標準は、別表第1(A)に掲げる空気比の値を基準として空気比を低下させるように設定すること。

ウ.
複数の燃焼設備を使用するときは、燃焼設備全体としての熱効率(投入熱量のうち対象物の付加価値を高めるために使われた熱量の割合をいう。以下同じ。)が高くなるように管理標準を設定し、それぞれの燃焼設備の燃焼負荷を調整すること。

エ.
燃料を燃焼する場合には、燃料の粒度、水分、粘度等の性状に応じて、燃焼効率が高くなるよう運転条件に関する管理標準を設定し、適切に運転すること。

III. 個別管理標準を作成する上での留意点

  • (1)1. アでは、自主基準としての空気比を定めることを求めていますが、(1)1. イの空気比よりも厳しい必要はありません。そして、設定した空気比を確認する手段と記録方法を決める必要があります。ボイラメーカーに定期検査を依頼している場合は、排ガス測定結果(残存酸素濃度)から、計算式を使い[空気比=21÷(21-排ガス中の残存酸素濃度%)]、求めると良いでしょう。また、大気汚染防止法のばい煙発生施設に該当する場合は、残存酸素濃度が同時に測定されていますので、この残存酸素濃度から空気比が求められます。
  • (1)1. イの空気比は、省エネ法別表第1(A)の基準値以下で設定する必要があります。また、設定した空気比を確認する手段と記録方法を決める必要がある点は(1)1. アと同様です。
  • (1)1. ウの「複数の燃焼設備」は、バーナーの本数ではなく、ボイラーや加熱炉を複数設置している場合に規定すべき項目です。負荷状況や操業状況に応じて使用基数を決めるなどであり、実施状況は運転日誌上に時間帯ごとの運転基数などを記録することで確認する方法が良いでしょう。
  • (1)1. エは、燃料の種類に応じ運転条件を設定することを求めています。ボイラメーカーや加熱炉メーカーからの設備仕様書等には、使用燃料や設定値(運転条件)が規定されていますので、管理標準中の「参考マニュアル」として記載することをお勧めします。また、設備仕様書等で燃料(噴霧媒体)の供給圧力、温度などが規定されている場合は、規定値を遵守していることを運転日誌上に記録することが必要です。
回答者

技術士(衛生工学) 加治 均