省エネQ&A
契約電力と30分デマンド値の関係について教えてください。
回答
30分最大需要電力計により、30分間の電気の使用量[kWh]を計測、平均使用電力(kW、30分デマンド値)を算出します。そして1ヶ月の最大の30分デマンド値(月次最大需要電力)を求めます。高圧受電し契約電力が500kW未満の場合は、その月と過去11ヵ月の月次最大電力値の中で最も大きい値を契約電力とします。
電気料金は基本料金と電力量料金で構成されています。以下、契約電力と30分デマンド値の関係についてご説明します。
契約電力が50kW以上であれば、トランス(下写真はキュービクルの一例)などが格納されたキュービクルを需要家が自前で設置の上、高圧受電(6,600V)し、単相100Vや三相200Vなどに降圧する必要があります。
高圧受電では、電力会社が30分最大需要電力計の組み込まれた電子式電力量計を取付け、電気使用量を計測しています。30分最大需要電力計は、30分間(毎時ごとの0分~30分、30分~60分の30分間)の電気の使用量[kWh]を計測し、平均使用電力(kW、30分デマンド値)を算出します。そして1ヶ月の最大の30分デマンド値(月次最大需要電力)を記憶し、表示するようになっています。
高圧受電し契約電力が500kW未満の場合は、その月と過去11ヵ月の月次最大電力値の中で最も大きい値を契約電力とします。つまり1回でも大きな30分デマンド値が出ると1年間はそのデマンド値が契約電力として適用されます。また、契約電力が500kW以上の場合は、協議により契約電力が決められています。月次最大需要電力が契約電力を超えると、通常より割増しの違約金を電力会社に支払うことになります。
例えば、図Aのように、最初の30分間で300kWの負荷を使用、そして次の30分間で500kW負荷を連続して使用すれば、30分デマンド値は500kWとなります。また、この1時間での電力使用量は400kWh(=300kW×0.5h+500kW×0.5h)です。
もし、図Bのように、図Aの500kW負荷の最初の15分間の平均電力が500kWのままで次の15分間の平均電力が100kWになるように負荷を制限出来たとすると電力会社の30分デマンド値は300kW[=(500kW×0.25h+100kW×0.25h)÷0.5h]となり、デマンド値は変わりません。また、この1時間での電力使用量は300kWh(=300kW×0.5h+500kW×0.25h+100kW×0.25h)となります(図A,Bの出展は関西電気保安協会のホームページ)。
つまり、30分デマンド値が契約電力などの設定値を超えることを予知し、最大で30分の負荷制限対策が実行できれば、契約電力を低く抑えることでき、使用電力量の削減も期待できます。
ある工場の月次最大電力は下図のとおりです。この工場では次回のQ&Aでご説明予定のデマンド監視装置が設置され、契約電力を超しそうになると管理者の指示で生産設備を短時間停止していました。残念なことに、最大電力を記録した9月の当日は管理者が不在で、超過してしまったようです。事前に設備の停止の優先順位をマニュアル化し、現場レベルで対応できるようにすることで、最大電力を現状の契約電力である320kWから300kWまで抑制できたとした時の削減金額を求めると次の通りとなります。
【試算条件】
- 契約電力:320kW
- 目標電力:300kW
- 基本料金単価:1,269円/(kW・月)
- 受電力率:100%
【試算】
- 削減金額=(320-300)kW×1,269円/kW×(185-100)÷100×12月/年=259千円/年
- 回答者
-
技術士(衛生工学) 加治 均