省エネQ&A

力率の改善方法について教えてください。

回答

容量性のコンデンサを使うことで力率を1に近づけることが出来ます。取付け場所は受電点、電気室高圧母線、変圧器二次母線あるいは負荷と並列に取付ける方法があり、それぞれ長所・短所があります。

電力会社から供給されている電力は皮相電力であり、力率を1に近づけることで発電装置や変圧器などを小さくできることをご説明しました。では、どうやれば力率を1に近づけることが出来るのでしょうか?

答えは容量性のコンデンサを使うことです。この力率改善のためのコンデンサを「力率改善用コンデンサ」、「電力用コンデンサ」あるいは「進相コンデンサ」と呼びます。

取付け場所は受電点、電気室高圧母線、変圧器二次母線あるいは負荷と並列に取付ける方法があり、それぞれ長所・短所があります。設備費が安く、電気料金の力率割引を受けることを主目的とする場合は、受電点設置方式が有利で、一番多く採用されています。下図はその一例です(出典は「配線図ってどう読むの?」)。

配電図例 配電図例

以下、高圧電力A契約で、力率が80%で推移している事業所の力率を改善した際の電力基本料金の削減金額について試算します。

【試算条件】
  • 電力:200kW
  • 基本料金単価:1,269円/(kW・月)
  • 現状の受電力率:80%
  • 目標の受電力率:100%
【試算】
  • 力率改善率:100%-80%=20%・削減金額:
    契約電力×基本料金単価×力率改善率×12月/年
    =200kW×1,269円/kW×20%×12月/年=609千円/年
  • 追加するコンデンサ容量の算出:
    1)有効電力=200kW:最大電力を採用します。
    2)皮相電力=250kVA(=200÷0.8)
    3)無効電力={(皮相電力)2-有効電力2}1/2=(2502-2002)1/2=150kVA
【補足】
  • 有効電力として最大電力を使用して試算しています。工場稼動時の平均受電電力の値を把握すれば、進相コンデンサの容量は150kVA以下になります。
  • 進相コンデンサ(左下写真:一例)を設置する場合は、通常、直列に小容量のリアクトル(右下写真:一例)を接続し、開閉時の突入電流の低減、電源高調波の抑制を行います。実施に際しては、電気主任技術や電気専門企業に相談してください。
進相コンデンサと小容量リアクトル 進相コンデンサと小容量リアクトル
  • 夜間や深夜に進相コンデンサが投入されたままになっていると、力率は1を大きく超えて進み、異常電圧発生の恐れがあります。このような不具合を防止するため、進相コンデンサの投入量を自動的に制御し、力率を自動的に調整するためのシステムとして、力率自動調整装置があります。
回答者

技術士(衛生工学) 加治 均