省エネQ&A
トップランナー変圧器について教えてください。
回答
変圧器については2014年度から新省エネ基準(トップランナー2.)が施行されています。日本電機工業会によると、トップランナー2.の変圧器では、旧JIS(JIS C4304(1977))に比べ約60%の、また、前JIS(JIS C4304(1981))に比べ約40%の省エネ効果が得られるそうです。
変圧器の一次コイルに電圧を印加すると鉄心に主磁束が通じ二次コイルの巻数に応じた電圧が誘起され、また負荷を接続すると二次電流が流れ一次側からコイルの巻数に反比例した一次電流が流入して、電力変換します。この時、
- 鉄心には磁気抵抗により、渦電流損失とヒステリシス損失が発生します。この損失は負荷の大きさに無関係で無負荷損と呼ばれています。
- 一方、コイルには抵抗があるため、電流が流れることにより損失が発生します。電流の大きさは二次側の負荷によるもので、負荷損と呼ばれています。
以上から、変圧器の損失は下式で表されます。
全損失[W]=無負荷損[W]+(a)2乗×負荷損[W]・・・・・・(1)
ここで、αは負荷率[-]であり、無負荷損と負荷損は変圧器の容量、仕様ごとに定まる特性値でメーカのカタログ等に記載されています。
したがい、変圧器の消費エネルギーを低減するには無負荷損と負荷損を低減することが必要で、下表のような低減化技術が採用されています(出典は、日本電機工業会2013年5月「トップランナー変圧器 第二次判断基準2014年スタート!!」)。
省エネ法では変圧器など31品目(2015年3月時点)について製造事業者等に、省エネ型の製品を製造するよう基準値(トップランナー基準)を設けています。
変圧器については2014年度から新省エネ基準(第二次判断基準:トップランナー2.)が施行されています。日本電機工業会によると、トップランナー2.の変圧器では、旧JIS(JIS C4304(1977))に比べ約60%の、また、前JIS(JIS C4304(1981))に比べ約40%の省エネ効果が得られるそうです。日本国内での変圧器稼動台数は2010年度時点で約260万台(油入235万台,モールド25万台)と推計され、このうち更新推奨時期である20年を超過している1991年以前の変圧器は約100万台を占め、トップランナー2.への更新により大きな省エネ効果が期待できます。
以下、1980年製の油入変圧器1台を、同じ容量のトップランナー2.に更新した時の省エネ効果を試算します。
1. 変圧器仕様
- 更新前:50Hz三相200kVA油入変圧器(1980年製)、1台
無負荷損=600W、負荷損=2,900W - 更新後:50Hz三相200kVA油入変圧器(トップランナー2.)、1台
無負荷損=315W、負荷損=2,140W
2. 試算条件
- 負荷パターン:
平日(昼間)の負荷率、稼働時間×稼働日数:50%、18h/日×270日/年
平日(夜間)の負荷率、稼働時間×稼働日数:1%、6h/日×270日/年
休日の負荷率、稼働時間×稼働日数:1%、24h/日×95日/年
3. 試算
- 更新前後で変圧器容量は同じであるため、負荷率も同じ。
- 現状の変圧器の年間の変圧器損失は、5,256+3,525=8,781kWh/年
◯無負荷損:600/1,000kW×24h/日×365日/年=5,256kWh/年
◯負荷損:3,523.5+0.5+0.7≒3,525kWh/年
平日(昼間):(0.5)2×2,900/1,000kW×18h/日×270日/年=3,523.5kWh/年
平日(夜間):(0.01)2×2,900/1,000kW×6h/日×270日/年=0.5kWh/年
休日:(0.01)2×2,900/1,000kW×24h/日×95日/年=0.7kWh/年 - 更新後の変圧器の年間の変圧器損失は、2,759+2,601=5,360kWh/年
◯無負荷損:315/1,000kW×24h/日×365日/年=2,759kWh/年
◯負荷損:2,600.1+0.3+0.5≒2,601kWh/年
平日(昼間):(0.5)2×2,140/1,000kW×18h/日×270日/年=2,600.1kWh/年
平日(夜間):(0.01)2×2,140/1,000kW×6h/日×270日/年=0.3kWh/年
休日:(0.01)2×2,140/1,000kW×24h/日×95日/年=0.5kWh/年 - 年間の電力削減量:8,781-5,360=3,421kWh/年
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均