省エネQ&A
レシーバタンク増設による空気圧縮機の省エネ効果試算方法は?
回答
時間的に変動する必要圧縮空気量に対し、空気圧縮機の吐出圧力を高めに設定すると大きな動力を必要とします。その回避策として、レシーバタンクの増設による空気圧縮機の省エネをご紹介します。最大エア消費量の発生頻度が少なく、かつ、継続時間が短ければ、実践的な対策と言えます。
空気圧縮機(エアコンプレッサ)で圧縮された空気は配管で工場内へ供給され、
- 削った鉄やプラスチックくず、水滴やホコリを吹き飛ばす
- 吹き付け塗装に使う
- 圧縮空気を動力源としてエアシリンダなどを駆動する
などの用途に使用されています。そして、エアシリンダに代表される通り、圧縮空気の必要量は時間的に変動することが一般的です。そして、設備などの使用空気量が空気圧縮機の吐出量を超えると、配管圧力は低下していきます。設備が必要とする圧力を下回らないように、空気圧縮機の吐出圧力を高めに設定することで回避している事例を散見しますが、吐出圧力が高いほど大きな動力を必要とします。
その回避策として、レシーバタンクの増設による空気圧縮機の省エネをご紹介します。レシーバタンクの容量と消費空気量、吐出圧力等との間には、ボイル・シャルルの法則から、以下の関係が成立します。
=(Q×1000×t/60)/(T1/T2-P3/T3)・・・・(1)
V:レシーバタンクの容量[L]
Q:消費空気量[m3/min](=最大エア消費量—空気圧縮機の吐出量)
t:最大エア消費量の継続時間[s]
T1:大気(吸気)の絶対温度[K]
T2:レシーバタンクの最初の絶対温度[K]
T3:レシーバタンクの最終の絶対温度[K]
P1:大気(吸気)の絶対圧力[MPa-A](=0.101)
P2:レシーバタンクの最初の絶対圧力[MPa-A](「アンロード圧力」相当)
P3:レシーバタンクの最終の絶対圧力[MPa-A](「ロード圧力」相当)
※ T1=T2=T3と考えて差し支えありません。
※ P2-P3は空気圧縮機の制御圧力幅(MPa)です。
最大エア消費量の発生頻度が少なく、かつ、継続時間が短ければ、実践的な対策と言えます。
【試算条件】
- 空気圧縮機定格容量:37kW
- 現状の空気圧縮機の制御圧力幅:0.2MPa(=0.7MPa-G-0.5MPa-G)
- レシーバタンク増設後の空気圧縮機の制御圧力幅:0.1MPa(=0.6MPa-G-0.5MPa-G)
- 空気圧縮機の吐出量:6m3(立方メートル)/min
- 最大エア消費量:10m3(立方メートル)/min
- 最大エア消費量の継続時間と発生頻度:20s秒、1時間に12回発生
- 空気圧縮機の稼働時間と負荷率:8,760h/年(=24h/年×365日/年)で80%
※補足説明
1)正確には電動機効率を考慮する必要があります(試算値より省エネ効果が増加)。
2)空気圧縮機の負荷率は、吐出量が不足状態では100%となりますが、その頻度は少なく短時間のため平均的な負荷は100%以下となります。
【試算と結果】
- 必要なレシーバタンク容量は、温度上昇は無視できる程度のため、(1)式から、
0.1013×(10-6)×1,000×20/60÷0.1=1,351L
Q1168の図より、空気圧縮機の吐出圧力を0.60MPa-G[=(0.7+0.5)÷2]から、
0.55MPa-G[=(0.6+0.5)÷2]まで低減した時の軸動力の改善率は0.08[=1-(93%÷101%)] - 年間の空気圧縮機の電力削減量は
37×8,760×0.80×0.08=20,744kWh/年
なお、ある圧縮機メーカでは空気圧縮機の負荷率に応じてアンロード圧力を下げ、余剰な空気圧力をカットすることで省エネ化を図る空気圧縮機を販売しています。この場合、レシーバタンクの増設は不要ですが、負荷が高い時は高い吐出圧力となります(省エネ率が低くなります)。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均