省エネQ&A

蒸発器(冷却器)周りの省エネ対策は?

回答

蒸発器は冷却器とも呼ばれ、その内部で冷媒を液体から気体に変化させることで、庫内の熱を冷却することができます。凝縮器と同様、アプローチ温度を測ることで機器の状態が確認できます。

今回は、「凝縮器(室外機)に対する省エネ対策は?」で紹介した熱交換器の1つでもある蒸発器(冷却器)の省エネ対策について、冷凍・冷蔵(倉)庫を例にとって解説します。

蒸発器は冷却器とも呼ばれ、その内部で冷媒を液体から気体に変化させることで、庫内の熱を冷却することができます。

凝縮器と同様、アプローチ温度を測ることで機器の状態が確認できます。

  • 冷凍・冷蔵庫内では、蒸発器を循環する空気との温度差を3℃程度、アプローチ温度(=蒸発器出口空気温度-冷媒蒸発温度)を7℃程度とすることが一般的で、最大値は15℃程度です。
  • チラー、ブラインクーラでは、アプローチ温度を3~5℃程度とすることが一般的で、アプローチ温度が10℃以上ある場合は異常と見なせます。(なお、チラー、ブラインクーラでは冷却水やブラインの出口温度制御を行うのが通例です。)
  • 冷凍・冷蔵庫内の凍結処理に関しては、短時間に作業を完了させることが品質上求められるため、庫内温度を低くして入庫品と大きな温度差(例えば15℃)を作ることが一般的で、その分、アプローチ温度は小さくなる傾向にあります。なお、冷媒蒸発温度が庫内温度より15℃以上下回っていたら機器の異常と見なせます。

アプローチ温度に異常値等が見受けられた場合は、メーカーへの点検を依頼願います。

蒸発器周りの比較的容易に取り組める省エネ対策として、以下の方法があげられます。

  • 蒸発器フィンの定期的洗浄
    フィンの定期的洗浄により、(フィンの汚れ具合等により増減しますが)圧縮機動力を2~4%程度削減できる。
  • 夜間等の人の出入りが少ない時間帯での庫内ファンの停止
    冷凍・冷蔵庫の扉の開閉に伴う外気の侵入熱は全熱負荷の20~30%にも達するため、夜間等の人の出入りが少ない時間帯では外気の侵入熱が減少する分、熱負荷も低下します。そのため、庫内に複数のファンが設置されている場合は、その一部を停止することで、ファンの使用電力とファンモータの発熱による熱負荷の削減が図られます。(なお、出し入れ時にはファンが確実に運転されるよう、タイマーでファンの発停を行う必要があります。)
  • 冬期・中間期等でのデフロスト間隔の延長
    通常、蒸発器は0℃以下となるため、蒸発器によって庫内の水蒸気が凝縮・凍結します。凍結が進むと循環風量が低下し、更に凍結が進むことで、冷却不良と効率低下を招くため、定期的なデフロスト(霜取り)操作が必要となります。デフロスト操作には、1. ホットガスデフロスト(圧縮機から吐出される高温の冷媒ガスを蒸発器に送り、その熱で霜を融解させる)、2. ヒータデフロスト(電気ヒータで霜を融解させる)、3. 散水式デフロスト(加熱水を蒸発器に噴霧して霜を融解させる)や4. オフサイクルデフロスト(5℃以上の庫内で庫内の空気熱で霜を融解させる)操作があります。この中で、1. 散水式デフロスト操作と2. ヒータデフロスト操作はエネルギー使用量が多い分、作業実施後に高い省エネ効果が見込めます。(下図:出典は東京都環境局の「冷凍冷蔵庫の省エネルギー対策」)。

なお、デフロスト操作を減らせるのは、外気湿度の低い中間期や冬期、扉の開閉が無く冷凍機の稼働時間が少ない時、ピーク時間調整契約で昼間冷凍機を停止している時、などです。

デフロスト操作回数削減前後の使用電力量比較図 デフロスト操作回数削減前後の使用電力量比較図

その他、冷凍・冷蔵庫への入庫品量が季節により大幅に変動する場合、庫内に仕切板を設置して使用範囲を分割し、保管量の少ない期間は一部だけを使用、それ以外の部分を冷却停止することも、省エネ効果が見込める対策となります。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均