省エネQ&A
凝縮器(室外機)に対する省エネ対策は?
回答
凝縮器は冷媒が蒸発器で被冷却物から奪った熱を冷却水や大気に放出するための熱交換器です。凝縮温度と冷却水(外気)出口温度の差をアプローチ温度と呼び、この温度差を測ることで機器の状態を見極めることができます。
今回は、比較的容易に取り組める凝縮器への省エネ対策について解説します。
冷凍・冷蔵設備で採用されている冷凍サイクルを下表に示します(出典:「冷凍冷蔵機器について」 平成26年3月25日 経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 オゾン層保護等推進室 作成)。
冷凍・冷蔵設備では蒸気圧縮冷凍サイクルが主に採用され、凝縮器、膨張弁、蒸発器と圧縮機で構成されます。
これらのうち、凝縮器は冷媒が蒸発器で被冷却物から奪った熱を冷却水や大気に放出するための熱交換器です。凝縮器には水冷凝縮器と空冷凝縮器があり、各々の冷媒凝縮温度と外気(冷却水)温度の関係の一例を示すと、下図のようになります。
上図で、凝縮温度と冷却水(外気)出口温度の差をアプローチ温度と呼びます。この温度差を測ることで機器の状態を見極めることができます。
例えば、通常、水冷凝縮器のアプローチ温度は3~5℃が一般的ですが、7~8℃以上ある場合や温度差が正常でも凝縮温度が冷却水入口温度より13℃以上高いのは異常です。一方、空冷凝縮器では空気出口温度が計測されることは稀であるため、アプローチ温度で異常を判断することは困難ですが、凝縮温度が外気温より20℃以上高いのは異常といえます。このような異常が認められた場合には、メーカーへの点検を依頼願います。なお、凝縮温度には許容される下限値があり、下限値を下回らないように自動制御(ウィンターコントロール)されているため、この場合、前述の基準は当てはまりませんので注意ください。
凝縮器(熱交換器)における熱交換量Qは、Q=U×A×Δtm(U:総括伝熱係数、A:伝熱面積、Δtm:対数平均温度差)で表されます。凝縮器の性能が低下する(Qが小さくなる)と、冷媒凝縮温度が上昇し、圧縮機の消費動力を増加させ、結果としてCOPを低下させます。そのため、設計時のQを保つには、総括伝熱係数Uと対数平均温度差Δtmを維持することが必要となり、以下のような対策が求められます。(なお、凝縮器自体の能力向上策として、伝熱面積Aを後付で増加させることも省エネ対策として有効です。)
- 凝縮器フィンの定期的洗浄 フィンを定期的に洗浄することで、(フィンの汚れ具合等により増減しますが)圧縮機動力を5%程度低減。
- 凝縮器への日よけ設置 日よけ等によって南西側を日射遮蔽することで、夏期の晴天時間帯の圧縮機動力を5%程度低減。
- 凝縮器への散水 凝縮器に水を噴霧(13L/h/台)することで、気化熱を発生させ、盛夏時には圧縮機動力を7%程度低減。
ただし、このような対策を実施する際の注意事項として以下の2点があげられます。
- 日よけ等を設置する際は、遮断材をなるべく室外機から離して設置し、室外機周辺の広範囲を日陰にすること。
- 水噴霧は凝縮器外表面へのスケール付着の恐れがあり定期的な清掃が必要となること。
これら注意事項に加えて、冷却水の流量や風量の不足、空気のショートサーキット、冷媒の過充填、空気など不凝縮性ガスの侵入なども性能低下の原因となりますので、メーカーによる定期的な点検を受診されることをお奨めします。
- 回答者
-
技術士(衛生工学) 加治 均