省エネQ&A

蒸気圧低減に伴う蒸気配管からの放熱効果について

回答

ボイラでの製造蒸気圧を下げると飽和蒸気温度も下がるため、蒸気輸送管での放熱量は低減します。ただ、放熱量低減効果に対し、ボイラ本体での省エネ効果が50倍程度も大きく、改善前後の圧力差が大きいときは「蒸気圧力を下げたときの省エネ効果の求め方は?」の式で求めるだけで十分なようです。

「蒸気圧力を下げたときの省エネ効果の求め方は?」と「蒸気輸送管からの放熱について」の通り、ボイラでの製造蒸気圧を下げることや蒸気輸送管を保温することは省エネに直結します。

ボイラでの製造蒸気圧を下げることで飽和蒸気温度も下がるため、蒸気輸送管での放熱量は低減します。したがって、蒸気圧低減に伴う省エネ効果は蒸気輸送管での放熱量をも加味する必要があることになります。そこで、両者の省エネ効果の程度について以下の検討条件を設定し、評価を行います。

1. 設備仕様

  • ボイラ燃料種と定格熱効率(低位発熱量基準):都市ガス13A×90%
  • ボイラ供給水:50℃で供給
  • ボイラ配管:100A×40mm保温厚×150m相当長

2. 現状の運転条件

  • ボイラでの発生蒸気圧力:0.80MPa-A
  • 必要蒸気量:3,000kg/h

3. 現状の1時間当たりの燃料使用量と蒸気輸送配管からの放熱量

3.1 燃料使用量

  • 蒸気表から、0.80MPa-Aの飽和蒸気の比エンタルピは2,769kJ/kgで、ボイラ供給水の比エンタルピは209kJ/kg
  • 13Aの低位発熱量は40.6MJ/Nm3(立法メートル)
  • 燃料使用量は、(2,769-209)×3,000×1÷0.9÷40,600=210.2Nm3(立方メートル)/h

3.2 蒸気輸送配管からの放熱量と相当燃料使用量

  • 蒸気表から、0.80MPa-Aの飽和蒸気温度は170℃
  • 「蒸気輸送管からの放熱について」の図2から、100Aの管サイズで保温厚みが40mmのときの単位長さ、単位温度差当たりの放散熱量は0.55W/m/K
  • 蒸気輸送配管からの放熱量は、0.55×(170-20)×150×1×3.6KJ/Wh=44,600kJ/h
  • 燃料使用量は、44,600÷0.9÷40,600=1.2Nm3(立方メートル)/h

4. 見直し後の運転条件

  • ボイラでの発生蒸気圧力:0.40MPa-A

5. 見直し後の1時間当たりの燃料使用量と蒸気輸送配管からの放熱量

5.1 燃料使用量

  • 「蒸気圧力を下げたときの省エネ効果の求め方は?」の通り、(間接加熱の場合)加熱に有効な熱量は蒸発潜熱であり、0.80MPa-Aの蒸発潜熱が2,048kJ/kgで、0.40MPa-Aの蒸発潜熱が2,134kJ/kgであることから、0.40MPa-Aに圧力を下げたときの必要蒸気量は、3,000×2,048÷2134=2,879kg/h
  • 蒸気表から、0.40MPa-Aの飽和蒸気の比エンタルピは2,739kJ/kgで、ボイラ供給水の比エンタルピは209kJ/kg
  • 燃料使用量は、(2,739-209)×2,879×1÷0.9÷40,600=199.3Nm3(立方メートル)/h

5.2 蒸気輸送配管からの放熱量と相当燃料使用量

  • 蒸気表から、0.40MPa-Aの飽和蒸気温度は144℃
  • 蒸気輸送配管からの放熱量は、0.55×(144-20)×150×1×3.6KJ/Wh=36,800kJ/年
  • 燃料使用量は、36,800÷0.9÷40,600=1.0Nm3(立法メートル)/h

6. 製造蒸気圧低減による省エネ効果

  • ボイラ本体
    0.80→0.40MPa-A:210.2→199.3Nm3(立法メートル)/h、削減量は10.9Nm3(立法メートル)/h
  • 放散熱量
    0.80→0.40MPa-A:1.2→1.0Nm3(立方メートル)/h、削減量は0.2Nm3(立方メートル)/h

製造蒸気圧低減による省エネ効果は、ボイラ本体での省エネ効果が50倍程度も大きく(=10.9÷0.2)、改善前後の圧力差が大きいときは「蒸気圧力を下げたときの省エネ効果の求め方は?」の式で求めるだけで十分なようです。ただし、以下の場合は、放熱量が相対的に高い割合を占めることになります。

  • 必要蒸気量が相対的に少ない場合や蒸気輸送配管の放熱面積が相対的に大きい場合(ボイラの負荷率がボイラ設置時に比べ低下しているとき等)
  • 蒸気輸送配管を保温していない場合(Q1203の通り、未保温時の放熱量は保温時の10倍程度)。
回答者

技術士(衛生工学) 加治 均