省エネQ&A

油圧ユニットの省エネのポイントは?

回答

油圧ユニットでの損失は、1. 電動機での損失、2. ポンプでの損失、3. 回転数に比例する損失に分類されます。1. ~3. の対策を実施していない油圧ユニット(従来品)に対し、1. と2. の対策を実施することで従来品より約20%の省エネを、また、3. を付加することで更に約40%もの省エネを達成できます。

油圧ユニットは油圧動力発生装置であり、パスカルの原理(下図)を応用して、「圧力を離れた場所に伝えて大きな物を動かしたり、支えたりする」目的で、工場ではプレス機、旋盤やマシニングセンタなどの工作機械他で使用されています。

パスカルの原理 パスカルの原理

油圧ユニットは、力の制御や無段階変速が簡単、作動も円滑、振動が少なく作動がなめらか、遠隔操作が簡単などの長所を有する反面、配管が面倒、火災の危険性がある、油温が変化すると速度も変わる、エネルギー効率が悪いなどの短所を有しています。エネルギー効率が悪いのは、「電力→電動機で回転エネルギーに変換→油ポンプで油圧エネルギーに変換」と2回のエネルギー変換を行うためです。

また、使用面での特長として、工作機械などの油圧ユニットではワークのクランプやツールのチャックなど圧力は必要とするものの、油量を必要としない低負荷(40%以下)での使用(圧力保持状態)が長時間にわたり続くことが挙げられます。

油圧ユニットが理論的に必要とする電力Wとポンプが吐出する流量Qは、

W=N(電動機回転数)×q(ポンプ容量)×P(ポンプ吐出圧力)…(1)
Q=N(電動機回転数)×q(ポンプ容量)…(2)

で表され、機械の加工状況(負荷状況)に応じて必要な圧力Pと流量Qを供給することです。(1)式は理論的に必要な電力を示しており、実際の油圧ユニットでは下記1. ~3. の損失分が上乗せされたものが油圧ユニットでの消費電力となります。

油圧ユニット消費電力=W+(1. +2. +3. )…(3)

ここで、損失1. から3. は下記のとおりです。

1. 電動機での損失:

油ポンプを駆動する電動機として三相誘導電動機が一般的に用いられています。「トップランナーモータが2015年度からスタートします。」のとおり、我が国ではトップランナーモータの普及を目指しており、定格負荷時の効率向上が期待できます。加えて、油圧ユニットでは、低負荷でも効率の良い電動機を使うことが結果として省エネに繋がります。

電動機での損失 電動機での損失

2. ポンプでの損失:

一般的なポンプが多量の液体を吐出すことに適した遠心式であるのに対し、油圧ユニットで用いられる油ポンプは高い圧力(21MPa-G程度以下)で油を吐出することを求められ容積式が採用されます。ポンプには7MPa-Gまでの圧力で効率が高いベーンポンプや7~21MPa-Gの中高圧で効率の高いピストンポンプなど、使用圧力により効率の高いポンプの種類が異なるので、使用圧力に応じポンプを使い分けることが必要です。また、圧力保持時に、ポンプ容量qが小さくなる機構を持つ可変容量ポンプや容量の異なるポンプを2台用意(ダブルポンプ)することは、(1)式のとおり、省エネに直結します。

3. 回転数に比例する損失:

(1)式から、ポンプ容量qではなく電動機回転数Nを小さくするという別の方法でも省エネ効果が得られることが分かると思います。実際、既存の油圧ユニットにインバータを追加して回転数を下げることで省エネを図ることをユーザー自身が行っている事例もあります。ここで注意していただきたい点は、回転数を下げると電動機の効率が低下し、また、同じ回転数でも負荷トルクにより電動機の効率が変化する点です(下図)。したがって、最適な省エネ運転を行うためには、電動機の効率や負荷の状態に応じた最適な回転数を選定することが必要となります。

電動機負荷トルク 電動機負荷トルク

油圧ユニットメーカによると、1. ~3. の対策を実施していない油圧ユニット(従来品)に対し、1. と2. の対策を実施することで従来品より約20%の省エネを、また、3. を付加することで更に約40%もの省エネを達成できます。1. ~3. 損失は熱エネルギーとなって作動油の温度上昇の原因となりますが、省エネを進めることで油温上昇を低く抑えることが出来るというメリットも享受できます。

使用中の油圧ユニットが省エネであるかどうかを見極めるには、油圧ユニットの電力使用量の実測や運転サイクルの確認が必要ですが、室温に対し作動油温度が15℃以上高い場合は省エネでないおそれがあります。

(出典:株式会社不二越「NACHI TECHNICAL REPORT」)

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均