省エネQ&A
LED照明でのブルーライトハザードって何?
回答
LED照明の主流は低波長のブルーライトを多く含んでいるため、睡眠障害、眼精疲労や将来の黄斑部変性症のリスクを増大させる恐れ(ブルーライトハザード)が、一部の専門家から指摘されています。ただ、通常には有り得ない強力なライトを浴びせた場合以外は、ブルーライトハザードは実証されていないようです。
パソコンやスマートフォン、タブレット、液晶テレビといった電子機器はもちろん、通常の照明器具もLEDを採用したものが普及しつつあります。現在のLED照明の主流は、通常より強い低波長のブルーライトを多く含んでいるため、睡眠障害、眼精疲労や将来の黄斑部変性症のリスクを増大させる恐れ(ブルーライトハザード)が、一部の専門家から指摘されています。
LEDはある波長を中心とした単色光に近い光を発光しますが、白色光そのものを出すLEDはありません。このため、LEDによる白色光を実現する照明方式には、1. 青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた方式、2. 紫外線LEDと赤緑青(RGB)の3色を発光する蛍光体を組み合わせた方式、3. 赤色LED、緑色LED、青色LEDを組み合わせた方式などがあります。1. の「青色LED+黄色蛍光体」は、補色となる2色が混色すると白色に見えることを利用した照明方式で、一番高効率であり、大きな光束を得られることから現在の主流の照明方式となっています。
下図は、LED照明、蛍光灯、白熱電球の分光分布図です(出典:日本電設工業協会「照明器具の関する課題と施行標準化の検討」)。
上図から、LED照明は450nm前後の青色と黄色がピーク、蛍光灯は青色と520nm前後の緑色と660nm前後の赤色がピーク、白熱電球は青色から近赤外領域まで広く光強度が分布していることが分かります。蛍光灯は、管内部に塗られた三原色を発する蛍光物質に紫外線を当てて発光させるのに対し、白熱電球は電球内部のフィラメントに電流を流すことでフィラメントの温度が上昇し発光させています。すなわち、現在の主流のLED照明では、黄色蛍光体を発光させるために青色LEDのエネルギーが必要であり、青色でエネルギーピークが発生します。この発光原理がブルーライトハザードを懸念される原因となっています。
しかし、上図から分かるように、LEDと蛍光灯の青色光の量は大きく異なりません。JISにおいても「ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性(JIS C 7550)」で青色光網膜傷害リスクの定量評価法が定めら、青色光による網膜傷害の実効放射輝度LBを算出し、100以下であればリスク免除グループとなります。
平成26年10月1日版の日本照明工業会他の報告書(「LED照明の生体安全性について」)には、各種光源の青色光による網膜傷害のリスクの度合いを表す実効放射輝度の一例が示されています(下図)。
上図は、発光面積と発光部の輝度を同じ条件にして比較した結果で、自然光(6500Kの昼光)の実効放射輝度を1とした場合の相対的なリスクの度合いを示しています。白熱電球、電球色の3波長形蛍光ランプ、電球色のLEDランプ(青色LED+黄色蛍光体)は、ほぼ同等のリスクの度合いであり、自然光(6500Kの昼光)と昼光色の3波長形蛍光ランプ、昼光色のLED(青色LED+黄色蛍光体)もほぼ同等のリスクの度合いであることがわかります。
現在主流のLED照明は多くのブルーライト(青色光)を含んでいますが、通常には有り得ない強力なライトを浴びせた場合以外は、ブルーライトハザードは実証されていないようです。
「LEDは演色性が良くない」との声を耳にします。演色性とはランプによる色の見え方のことで、演色性を定量化する方法に平均演色評価数(Ra)があります。Raは一般生活によく使われる8色を試験色とし、基準光源(自然光)で照らしたときと同じ色に見えたらRa100とします。下越術支援センターの2012年度研究報告書(「LED光源の演色性評価」)では、(a)RGB三波長形LED、(b)黄色蛍光LED、(c)高演色性蛍光灯、(d)寒白色蛍光灯、(e)白熱灯のRaを比較評価しています。その結果は、(a)49.9、(b)68.0、(c)86.5、(d)56.0、(e)97.4となり、「LEDは演色性が良くない」との声が裏付けられています。
演色性の向上と器具効率の向上は相反する課題ですが、すでにRa90以上の高演色のLED照明も市販されています。なお、JIS Z 9110-2010の照明基準総則では、長時間執務を行う事務所等ではRa80以上と規定されており、照度基準を満足するだけでなく、光の質の向上も求められ、演色性の向上は照明器具にとって重要な要件となっています。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均