省エネQ&A
空気圧縮機の排熱が暖房に利用できます。
回答
米国のエアーコンプレッサーメーカーが切替ダンパ付のエアーコンプレッサーを商品化しています。50%程度の温排熱の回収効率でも良いのなら、パッケージ型エアーコンプレッサーの排気口の直上に排気ダクトと排気ファン(換気扇)を設置し、室内に供給することでより簡単に暖房目的を達成できます。
今回は、エアーコンプレッサーの排熱を利用して行う暖房について説明します。エアーコンプレッサーは工場だけでなくビルや病院などでも使用されています。エアーコンプレッサーのサイクルは下図のとおりであり、a、b、c、dで囲まれた面積が仕事量を表しています。下図から、断熱圧縮より等温圧縮の面積が狭く、仕事量が少ないことが分かります。
等温圧縮は「冷やしながら」圧縮することであり、吸込温度を下げることが省エネに直結します。このため、パッケージ型のエアーコンプレッサーには空気を冷却する機器が付帯しています。冷却には水冷方式と空冷方式があり、水冷方式では冷却水が温排熱を除去し、空冷方式ではコンプレッサー室内に温排熱が排出されます。
熱量的には、コンプレッサー容量の100~110%程度の熱風が排出されます。つまり、37kWのエアーコンプレッサーであれば、37kWの暖房能力を持つこととなります。また、温度としては「圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その2:吸込み温度の低減)」で説明の通り、単段式の一般汎用エアーコンプレッサーで20℃の大気を吸って0.7MPa-Gまで昇圧すると170~190℃程度の温度まで上昇し、空冷方式の場合、コンプレッサー室内に廃棄される冷却空気温度は冬季でも30℃程度以上が期待できます。
米国のエアーコンプレッサーメーカーが切替ダンパ付のエアーコンプレッサーを商品化しています。
パッケージコンプレッサーの排気口の上に切替ダンパボックスが搭載されます。暖房が不要な期間では、ダンパBとDを全閉、ダンパCを全開とし室内やコンプレッサー室に温風が排気されるのを防ぎます(下図「Warm Weather Operation」参照)。
一方、暖房が必要な期間でエアーコンプレッサーが停止しているときは、ダンパA、C、Dを閉じ冷気の侵入を防止しています(ダンパBは開く)。そして、エアーコンプレッサー稼働によりダンパAを開け、また、ダンパC、Dは室内温度により開度調整を行います。(下図「Cold Weather Operation」参照)
米国のエアーコンプレッサーメーカーの商品は切替ダンパがアクチュエータ付きで、室内温度により自動で調整が行えることと高い熱回収率に特長があります。ただし、50%程度の温排熱の回収効率でも良いのなら、パッケージ型エアーコンプレッサーの排気口の直上に排気ダクトと排気ファン(換気扇)を設置し、室内に供給することでより簡単に暖房目的を達成できます。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均