省エネQ&A

改正省エネ法での「電気の需要の平準化に資する措置」って何?(その3)

回答

モノジェネレーション設備は発電の際に生じる排熱の回収・利用はしません。離島などで常用電源として使用されています。蓄電池は、充電によって電気を蓄えることで電源として繰り返し利用できる設備であり、夜間電力を充電し、昼間に放電することで、電力ピーク対策に利用できます。

(その1)と(その2)に続き、「電気の需要の平準化に資する措置」に関わる具体的な設備・機器として取り上げられているモノジェネレーション設備と蓄電池について紹介いたします。

1. モノジェネレーション設備

天然ガス、石油等を燃料としてエンジン、タービン等を用いて発電しますが、コージェネレーション設備と異なり、その際に生じる排熱の回収・利用はしません。モノジェネレーション設備は発電容量が小さいほど発電効率は低くなる傾向にあり、一般的に使用されている発電効率の下限はガスエンジンで33%程度、ディーゼルエンジンで31%程度(公表資料及びメーカーヒアリングによる最低値)と、いずれも系統電力の需要端効率である36.1%を下回っています。

モノジェネレーション設備は、離島のように電力会社の系統から給電が得られない場所などで常用電源として使用されています。

2. 蓄電池

蓄電池は、充電によって電気を蓄えることで電源として繰り返し利用できる設備であり、夜間電力を充電し、昼間に放電することで、電力ピーク対策に利用できます。実用的なレベルで需要家が実際に電気需要平準化対策として使用している電池は、概ねNAS電池、鉛蓄電池、リチウムイオン電池及びニッケル水素電池です。NAS電池は日本ガイシ株式会社が世界で初めて実用化したメガワット級の電力貯蔵システムであり、1990年代後半より電力会社の変電所施設の負荷平準用に設置されています。通常の事業所で利用する定置用の蓄電池としては、リチウムイオン電池、鉛蓄電池とニッケル水素電池があり、各蓄電池の比較を下表のとおりです(出典:東京都環境局「中小規模事業所の省エネルギー対策(基本編)」)。

 

リチウムイオン電池

鉛蓄電池

ニッケル水素電池

コンパクト化
(エネルギー密度(Wh/kg))

約200

約35

約60

電池コスト概算(円/kWh)

20万円/kWh

5万円/kWh

10万円/kWh

寿命

3500回
(6~10年)

3150回
(最大15年)

2000回
(5~7年)

システム効率

85%

78%

蓄電池の効率は、電池の充放電効率以外にも、パワーコンディショナーの直流・交流への変換効率や、断熱性能や冷却性能等の筐体効率を加味した蓄電池システム全体の効率で評価する必要があり、「システム効率=電池効率×パワコン効率×筐体効率」として定義されます。NAS電池のシステム効率は76%であり、いずれも増エネとなります。蓄電池の導入に際しては、コストの増大分(設置コスト、使用電力量増加による電気代の増分)と減少分(電力基本料金の削減、昼夜の電気料金価格差、太陽光発電と組み合わせる場合は購入電力と買電の価格差)の比較を行う必要があります。

蓄電池単体で使用する場合は、夜間の割安な電力を蓄電して昼間に使用すれば電気代の節約となります。また、太陽光発電システムと連携させる場合は、余剰電力を蓄電し発電量の少ない時間帯に蓄電池から供給することができます(下図:出典はシャープ株式会社ホームページ)。

蓄電池の使用方法 蓄電池の使用方法

以上の通り、モノジェネレーション設備や蓄電池についてはエネルギー使用量が増加すると評価されています。省エネ法で電気需要平準化評価原単位を求める際の評価係数(α=1.3)は、この点を是正するための手法であると言えます。

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均