省エネQ&A
ZEB、ZEHって何?
回答
ZEB(net Zero Energy Building)、ZEH(net Zero Energy House)は、「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味でゼロ又は概ねゼロとなる建築物」です。
ZEBは「net Zero Energy Building」を、ZEHは「net Zero Energy House」を指し、我が国では「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量(注1)が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなる建築物」と定義されています(注2)。
(注1)一次エネルギーとは自然界に存在しているエネルギー源のことで、石油、石炭、天然ガスなどの枯渇性のものと、太陽光、太陽熱など再生可能なものに分類されます。再生可能エネルギーは建物内で得ることもできます。
(注2)欧米諸国を始めとして世界各国がZEB/ZEHの実現と普及に向けてロードマップを作成し取り組んでいますが、Eが「エネルギー」か「エミッション」かや、英国ではオフサイトでの再生可能エネルギーの活用を含めるなど、ZEB/ZEHの定義は若干異なります。
ZEB/ZEHについては、経済産業省資源エネルギー庁が以前から検討しており、2009年には「ZEBの実現と展開に関する研究会」が立ち上げられ、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現と展開について」と題する報告書(以下「報告書」)が取りまとめられています。
報告書では、以下のような指摘や提言がされています。
- 我が国の業務ビルの平均エネルギー消費原単位は2400MJ/平方メートル/年であるのに対し、住宅では500MJ/平方メートル/年程度であり、ZEBの実現はZEHに比べて技術的なハードルははるかに高い。
- 我が国では、欧米諸国に比べて中高層の比率が高い建築物が狭隘な土地に建設される傾向があり、新エネ設備の導入可能な規模を踏まえれば、ZEBの実現がさらに困難な面がある。
- 条件が不利な我が国においてZEBの技術モデルが構築されれば、高温多湿な気候のアジア諸国、米国等への展開も十分に考えられ、我が国のみならず世界の省エネ、我が国の省エネビジネスの国際展開に資することができる。そのため、2030年までに新築公共建築物での実現を目指した開発等を進める。
- ZEB達成に向けては、我が国では中高層の比率が高い建築物が狭隘な土地に建設される傾向があることを踏まえれば、オンサイトでの再生可能エネルギーの導入には一定の限界があるため、まずは「省エネ性能の向上」を可能な限り進め、不足部分(全体の約30%)を「太陽光等の再生可能エネルギーで補う」という考え方で進める。
- ZEBを実際に達成できるのは新築建築物と考えられるが、ZEBに向けた取組は個々の建築設備や制御システムの技術進歩を通じて、既築建築物の改修においても省エネ性能の向上に大きく貢献することから、我が国の建築物全体の低炭素化に寄与する(下図)。
- ZEBの実現可能性について試算を行い、完全にZEBとなるのは3階建て以下の低層ビルであるが、10階建て程度でも現状の一次エネルギー消費量の2割程度となる(下図)。
建設大手各社はZEBの実現に向けてすでに動き始めています。ZEB第1号として、2013年10月から本格的な運用を開始した「森の中のオフィス」(山梨県北杜市、木造2階建てのオフィス棟5棟とホール1棟などから構成)は、初年度からのネット・ゼロ・エネルギーの達成を見込んでいます。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均