省エネQ&A

2013年度冬季の電力需給結果と2014年度夏季の電力需給の見通しは?

回答

2013年度冬季の電力需給結果について、最大需要日の需要(実績)の合計は節電効果により事前想定を下回り、電力供給の視点からは火力発電比率が88%を超える事態となっています。また、2014年度夏季の電力需給対策として節電協力を要請するものの、数値目標付きの節電要請は見送ることとしました。

2013年4月30日付で経済産業省から電力需給検証小委員会の報告書が公表されました。本報告書に基づき、2013年度冬季の電力需給結果と2014年度夏季の電力需給の見通しをご紹介します。

まず、2013年度冬季の電力需給結果について概説します。

  • 最大需要日の需要(実績)の合計は15,246万kWであり、事前の想定である15,421万kWを175万kW下回りました。2013年度冬季が記録的な寒波に見舞われたにも拘わらず事前想定を下回ったのは、節電効果によるものです(+36万kWの気温低下による暖房需要の増加-64万kWの経済停滞による減少-147万kWの節電による減少=-175万kW)。
  • 電力供給の視点からは、原子力発電所が稼働停止する中、直近の確定値である2012年度には火力発電比率が88%を超える事態となっています(下図:出典は電力需給検証小委員会報告書)。資源のない我が国は火力発電の燃料である化石燃料の大部分を海外からの輸入に依存しているため、2013年度の燃料費は約3.6兆円増加(販売電力量(9,000億kWh)で単純に割り戻すと4円/kWhの負担増加)と試算されています。
火力発電比率 火力発電比率
  • 各電力会社は火力発電所の巡回点検の回数を増やすとともに、設備のわずかな異常兆候の早期発見及び休日を利用した24時間体制での早期復旧等を実施していますが、2013年12月17日、北海道電力管内において管内の火力最大機である苫東厚真4号機の計画外停止が発生、さらに2014年1月9日には、寒波の影響により電力需要が増加し冬季の最小予備率を記録するなど、電力需給がひっ迫する状況に変わりはありません。

政府は2014年5月16日に関係閣僚会合を開き、2014年度夏季の電力需給対策として節電協力を要請するものの、経済活動に影響が出るとして数値目標付きの節電要請は見送ることとしました。

また、前述の電力コストの影響に加え、次の点を喚起しています。

  • 現状、原発の稼働が全て停止していることや、電源開発松浦火力発電所2号機のトラブルに伴い、周波数変換装置(FC)を通じた電力融通を行わない場合、需給バランスが特に厳しくなる関西電力及び九州電力は、60Hz管内の他電力(中部電力、北陸電力、中国電力)から、最大限の電力融通を行ったとしても、関西電力及び九州電力管内のみならず、中部及び西日本全体でも、電力の安定供給に最低限必要な予備率3%を確保することが出来なくなります。東日本からの電力融通を行えば、電力の安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できますが、FCによる融通を予め見込むことは、さらなる大規模電源の脱落が中部及び西日本で発生した場合に追加的な融通可能量が制約されるなど、リスクへの対応力がその分減じることを意味します。FCを通じた電力融通に予め頼らずとも、電力の安定供給を確保できることを目指した需給対策の検討が必要となっています。
  • 火力発電の稼働増による発電部門における温室効果ガスの排出量の大幅な増加が、我が国の地球温暖化問題への対応について困難をもたらしています。一般電気事業者の温室効果ガス排出量は、震災前の2010年度は約3.74億t-CO2でしたが、震災後、原発停止に伴う火力発電の焚き増しにより、2012年度は約4.86億t-CO2と、2010年度比で約1.12億t-CO2(約30%)増加しています。その間、我が国全体の温室効果ガス排出量は2010年度の12.6億t-CO2から2012年度の13.4億t-CO2へと約0.8億t-CO2(約6%)増加しており、発電部門の排出量の増加が大きな要因となっています。
  • 節電の取組が合理的な経費節減となる等、中長期的に需要家にとって利益につながる場合もありますが、東日本大震災後の電力需給がひっ迫した状況を踏まえた節電の取組は、電力の確保や製品の供給を行うにあたり、企業にとって一方的なコスト負担となる取組も多数行われていることを忘れてはなりません。また、東日本大震災後、企業を中心に自家発電設備の設置や生産の夜間・休日シフト(人件費の増加)等の取組が行われてきており、機会費用の損失や対策費用を含め、コストの増加を伴う取組が数多く行われていることには留意が必要です。
回答者

技術士(衛生工学) 加治 均