省エネQ&A
一次、二次エネルギーと最終エネルギー消費の違いは?
回答
「一次エネルギー」とは、加工されない状態で供給されるエネルギーで、石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱などであり、「最終エネルギー消費」とは、産業活動や交通機関、家庭など、需要家レベルで消費されるエネルギーの総量を指します。
2013年度版エネルギー白書では、以下のような説明がなされています。
エネルギーは、生産されてから実際に私たちエネルギー消費者に使用されるまでの間に、様々な段階、経路を経ています。大まかにみると、原油、石炭、天然ガス等の各種エネルギーが供給され、電気や石油製品等に形をかえる発電・転換部門(発電所、石油精製工場等)を経て、私たちに最終的に消費されるという流れになっています。この際、発電・転換部門で生じるロスまでを含めた我が国が必要とする全てのエネルギーの量という意味で「一次エネルギー供給」の概念が用いられ、最終的に消費者に使用されるエネルギー量という意味で「最終エネルギー消費」の概念が用いられています。国内に供給されたエネルギーが最終消費者に供給されるまでには、発電ロス、輸送中のロス並びに発電・転換部門での自家消費が発生し、最終消費者に供給されるエネルギー量は、その分だけ減少することになります。量的には、日本の国内一次エネルギー供給を100とすれば、最終エネルギー消費は69程度(2011年度の総合エネルギー統計による)でした。
以上から、
- 「一次エネルギー」とは、加工されない状態で供給されるエネルギーで、石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱など。
- 「二次エネルギー」とは、一次エネルギーを転換・加工して得られる電力、都市ガスなど。
- 「最終エネルギー消費」とは、産業活動や交通機関、家庭など、需要家レベルで消費されるエネルギーの総量(電力会社の発電所、石油精製工場、ガス製造所などエネルギー転換部門でのエネルギー消費は含まれない)。
を指します。
原油、石炭、天然ガスなど化石エネルギーを燃焼させて発電する場合、一次エネルギー供給量も発電量も計測できます。ところが、水力、地熱、風力、太陽光エネルギーなど非化石エネルギーによる発電では、時々刻々と水量や風速が変動するため、発電に投入されたエネルギー量(一次エネルギー供給量)を計測したり計算で求めたりすることは不可能です。
そこで、我が国の「総合エネルギー統計」では、非化石エネルギーは便宜的に火力発電の平均変換効率を用い、一次エネルギー供給を逆算し推計する方法が採用されています。この方法はアメリカ、ドイツ、イギリスなどでも採用されています。一方、カナダ、フランス、ノルウェーなど電源構成上、水力、原子力が大半を賄っており、火力発電が殆ど行われていない国々では、[一次エネルギー供給]=[最終エネルギー消費]として一次エネルギー量を求めています。
つまり、電源構成事情により一次エネルギーの定義は国ごとに異なります。このため、IEA(国際エネルギー機関)では、こうした各国の事情を踏まえ、横断的な比較の基準を提供するため、1991年以降、IEA加盟国全体のエネルギー構成から独自の判断に基づいて統一的に一次エネルギー換算を行い、結果を公表しています。一例として、水力の変換効率は100%、地熱の変換効率は10%、原子力の変換効率は33%として発生電力量から一次エネルギー量を求めています。
下図は、IEAが2011年のデータを基に、一次エネルギー消費総量と一人あたりの一次エネルギー消費量の多い上位10か国について取りまとめた結果です。我が国は、一次エネルギー消費総量では世界で5番目ですが、一人あたりの一次エネルギー消費量では33番目(3.61toe/人)に位置しています。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均