省エネQ&A

国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)について教えてください。

回答

COP17で先進国か途上国を問わず2020年以降どのように気候変動対策に取り組んでいくかを2015年末までに決めることに合意しました(ダーバン合意)。この合意に基づき、COP19では回答で解説する4点で成果が得られました。

11月11日から23日までポーランドのワルシャワで、国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)等が開催され、我が国からは石原環境大臣を始めとして各省の関係者が出席しました。

COPは大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標として1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」に基づき、1995年から毎年開催されている年次会議で今回は第19回目です。

COP17で先進国か途上国を問わず2020年以降どのように気候変動対策に取り組んでいくかを2015年末までに決めることに合意しました(ダーバン合意)。この合意に基づき、COP19では下記の4点で成果が得られました。

(1)2020年以降の各国の排出削減目標の提出について

2020年以降の各国の削減目標について、国内での準備を開始・強化して、COP21に十分先立って(可能ならば、2015年第1四半期までに)示すこと、そして、この目標等の案を示す際に提供する情報をCOP20で決めることに合意。

(2)「気候変動の悪影響に伴う損失・被害(ロス&ダメージ)に関するワルシャワ国際メカニズム」の設置

同メカニズムの運営組織、機能の概要、COP22での同メカニズムの見直し等に合意。

(3)カンクン合意における資金動員目標達成のためのプロセスに関する合意

途上国における排出削減と気候変動影響への適応の支援のための資金動員について、より具体的な道筋に合意。

(4)「途上国における森林減少・森林劣化からの排出削減、森林の炭素蓄積の保全、森林の持続可能な管理、森林の炭素蓄積の強化活動(REDD+)に関するワルシャワ枠組み」への合意

途上国が自国の森林を保全するための活動に対し経済的な利益を国際社会が提供することへの合意。

11月20日の閣僚級会合で、石原環境大臣は下記要旨の演説を行いました。

  • 京都議定書第一約束期間の削減実績は8.2%が見込まれ、6%削減目標を達成すること。
  • 2020年の削減目標を米中と同じ2005年比3.8%減とすることを説明(併せて、この目標は、エネルギー政策が定まらない中、稼働原発をゼロと仮定した「暫定的」なものであるとの説明がなされています)。
  • さらなる技術革新、日本の低炭素技術の世界への応用と途上国に対する支援として2013年から2015年までの3年間に1兆6千億円(約160億ドル)の資金拠出を表明。

COP19のキーワードの1つが「ギャップ」という言葉だったようです。すなわち、先進国及び途上国が掲げている2020年の温室効果ガスの排出削減目標/削減行動をすべて足し合わせても、地球全体の気温上昇を2℃までに抑えるのに必要な排出削減量に比べると、とても大きな隔たり(「ギャップ」)があるということを意味します(注1)。

注1:2020年の各国の排出削減目標/排出削減行動が完全に実施された場合であっても、2020年の排出ギャップは年間8-12ギガトン(CO2換算)と見積もられています。2020年における排出削減の技術ポテンシャルは、約17±3ギガトン(CO2換算)であり現行対策ケースの排出レベルと2℃目標とのギャップを埋めるには十分ですが、対策をとるための時間がなくなりつつあります。

この「ギャップ」の視点から、「米中と同じ2005年比3.8%減」の削減目標は「1990年比では約3%の増加」を意味し、「深く失望した。日本政府に対して決定を見直すよう求める」(英国エネルギー・気候変動省のホームページ)などの批判を招いたようです。

一方、2020年の各国の目標引き上げにつながるプロセスとして、各国は再エネと省エネに限らず「高い削減の可能性がある分野」について、政策の検討と導入促進に合意しました。この点からも、省エネの比重は今後ますます高まるものと思われますし、とりわけ、「温室効果ガスの排出削減を世界的視野で行う」視点での省エネ技術の海外展開がクローズアップされることと思われます。

(注)COP21については「COP21で採択されたパリ協定について教えてください。」参照

回答者

技術士(衛生工学) 加治 均