省エネQ&A
涼風扇(装置)の省エネ効果は?
回答
「水の気化放熱効果」を利用し、室内や工場内で使用するための涼風扇(装置)が市販されています。空気出口温度を空気入口での湿球温度以下にはできませんが、気温が高く湿度が低い時間帯に涼風扇(装置)と空調機を併用することで、また、湿度の高い時間帯は空調機を使用することで、省エネが達成できます。
夏季に打ち水をすることで、水が気化し、周囲の熱を奪うことで気温が下がります。この「水の気化放熱効果」を利用し、室内や工場内で使用するための涼風扇(装置)が市販されています。
涼風扇(装置)は、空気と水が接触・熱交換するための冷却エレメント、空気を送り込むための送風機、水を送り込むためのポンプで構成されています。冷房設備のコンプレッサが不要なため電力使用量は少なくて済みますが、冷房設備とは異なり、空気出口温度を空気入口での湿球(露点)温度以下にはできません(注記)。
注記:空気の出口温度は冷却エレメント等により変化します。乾球温度と湿球温度の温度差に対する実際の出口空気温度と入口での湿球温度の差を冷却効率と呼び、冷却エレメントにより変わりますが、0.9程度が期待できます。
一方、水が気化することで出口空気の湿度は上昇します。湿度が高くなるにしたがい汗の蒸発が阻害されるため、「蒸し暑い」と感じる人が増えてきます。そこで、水の気化による温度低下と湿度の上昇の関係を「不快指数」を指標として考察します。不快指数は蒸し暑さを定量的に表した指数であり、乾球温度(気温)をt(℃)、湿度をh(%)として、下式で表されます。
不快指数=0.81×t+0.01h×(0.99t-14.3)+46.3・・・(1)
日本人の場合、不快指数が77になると不快に感じる人が出始め、85になると93%の人が暑さによる不快を感じると言われています。
2013年の8月の1か月間で、
1)最高気温が一番高かった日(11日)
2)平均湿度が一番高かった日(23日)
3)最高気温が一番低かった日(25日)
4)平均湿度が一番低かった日(28日)
について、1時間ごとの乾球温度(気温)、湿球(露点)温度、湿度をもとに、東京での不快指数を求めると下図の通りとなります。ここで、
- 不快指数-1は、乾球温度(気温)と湿度から、(1)式により求めた不快指数であり、冷房装置や涼風扇(装置)がないときの状態です。
- 不快指数-2は、涼風扇(装置)を使用した結果、理想状態(湿度100%で空気入口での湿球温度が空気出口温度)となるときの状態です。
下図からご理解いただけるように
- 涼風扇(装置)は不快指数を下げる効果がある。
- 特に、気温が高く湿度が低い日時での低減効果が大きい。⇒8月11日と28日
- 逆に、気温が低く湿度が高い日時での低減効果が小さい。⇒8月23日と25日
- 具体的には、8月11日で不快指数-1と不快指数-2で77の不快指数を超えた総時間は24時間と9時間、8月23日では22時間と16時間、8月25日では5時間と0時間、8月28日では12時間と0時間と、5~15時間も77を超える時間が減少している。
一方で、外気温と湿度は時々刻々変化していることから、温湿度計を設置し、温湿度を見ながら、気温が高く湿度が低い時間帯に涼風扇(装置)と空調機を併用することで、また、湿度の高い時間帯は空調機を使用することで、省エネが達成できます。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均