省エネQ&A
圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その3:異なる使用圧への対応)
回答
吐出圧を下げていくと、吐出圧の低下に耐えられない機器が出現します。その機器の使用量が全使用量に比べ少ない場合は、ブースターの採用をお奨めします。また、水切り、エアーブロー、曝気用途など他のユーザーに比べ使用量は多いものの低い使用圧の用途の場合、ブロワーの導入をお奨めします。
「圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その1:吐出圧力の低減)」でご説明のエアーコンプレッサーの吐出圧を下げることでの省エネを進めていくと、吐出圧の低下に耐えられない機器が出現します。その機器の使用量が全使用量に比べ少ない場合は、その機器に対してだけ増圧する方法があります。増圧は増圧弁またはブースター(昇圧機)で行います。増圧弁は、パスカルの原理により、受圧面積比を変えることで高い出口側圧力に変換するものです。入口側空気の圧力により増圧をおこなっているため、圧縮比2では出口空気量と同量の入口側空気を廃棄することに注意が必要です。したがい、省エネ的には、ブースター(昇圧機)の採用をお奨めします。ブースターとしては、入口圧力の変動に柔軟に対応できるレシプロ式が一般的に使用されています。例えば、37kWのエアーコンプレッサー(吐出空気量6.5m3(*)/min)を0.5MPaの吐出圧力で年間5,000 時間稼動し、その内325L/minは0.7MPaまで部分昇圧することが必要な場合の増圧弁とブースターの年間消費電力量を求めると次の通りとなります
* m3=立方メートル、以下同
- 2倍増圧弁での2倍増圧時(1.0MPa=0.5×2)の廃棄する圧縮空気量は325L/minです。しかし、0.7MPaまでしか昇圧しないため、廃棄する圧縮空気量は、ボイル・シャルルの法則から、191L/min[=325L/min×(1.0/0.7)÷{(1.0/0.7)+1.0}]と求められます。
- 191L/minの圧縮空気を製造するために必要な年間電力量は、エアーコンプレッサーのモータ効率を90%とすると、6,040kWh/年(=0.191m3/min÷6.5m3/min×37kW÷0.9×5,000h/年)。
- 一方、ブースターを使用した場合、325L/minの圧縮空気を、0.5MPaから0.7MPまで昇圧するための消費電力は約0.67kWですので、必要な年間電力量は3,350kWh/年(=0.67kW×5,000h/年)。
- したがって、ブースターを使用した方が年間で2,690kWh/年(=6,040—3,350)だけ省エネとなります。
- 電力単価を18円/kWhとすると、年間削減額は48千円(=2,690kWh/年×18円/kWh)となりブースターを購入しても5年程度で回収できる可能性があることが分かります。
次に、水切り、エアーブロー(切粉飛ばし)、曝気用途など他のユーザーに比べ使用量は多いものの低い使用圧の用途の場合、その用途に対し減圧弁を設置し、減圧した圧縮空気を供給する方法があります。減圧弁では増圧弁のような駆動用圧縮空気を必要としませんが、減圧する分エネルギーをロスしています。したがい、先進の対策としてはエアーコンプレッサーに代えブロワーを導入することが行われています。ブロワーの吐出圧は約10kPa以上0.1MPa(G)であり、1MPa(G)以上あるエアーコンプレッサーとは異なるものの、ノズルの見直し等によりブロワーに代替できれば消費電力を1/3程度に下げることができます。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均