省エネQ&A
圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その2:吸込み温度の低減)
回答
理論断熱動力が重量流量と吸込み温度に比例し、吸込み温度を下げるほど動力を下げられます。コンプレッサー室は風通しの良い北側に配置し、室内温度を下げるため換気扇で換気、空冷式の排熱は排気ダクトから屋外排気、水冷式の場合は冷却水温度を低く、そして、吸気は屋外空気からが省エネのポイントです。
「圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その1:吐出圧力の低減)」でご説明の通り、エアーコンプレッサーの理論断熱動力は「圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その1:吐出圧力の低減)」の(1)式で表されます。ここで、気体の圧力、体積、温度、重量の間にはボイル・シャルルの式【Ps・Qs=G・R・Ts:Gは重量流量、Rはガス定数、Tsは吸込み温度(絶対温度)】が成立することから、理論断熱動力は重量流量と吸込み温度(絶対温度)に比例することが分かります。つまり、吸込み温度(絶対温度)を下げるほど理論断熱動力を下げられることとなります(下図、出典:省エネルギーセンター)。
ところで、ボイル・シャルルの法則【(圧力)×(体積)÷(絶対温度)=一定】から、圧縮操作により絶対温度も上がることが分かります。断熱圧縮したときの圧縮空気の吐出温度は下記の式で表されます。
単段式の一般汎用エアーコンプレッサーで20℃の大気を吸って0.7MPaGまで昇圧した場合には、圧縮比(Pd/Ps)は7.9となり、(1)式で256℃となりますが、実際には冷却があり170~190℃程度の温度になっています。高温であり、殆どのエアーコンプレッサーにはアフタークーラーが内蔵されています。アフタークーラーは圧縮直後の高温の圧縮空気を冷却する装置で空冷方式と水冷方式とがあります。空冷方式ではこの排気が放出されています。したがって、エアーコンプレッサーを設置するコンプレッサー室は風通しの良い北側に配置し、室内温度を下げるため換気扇で換気、空冷式の排熱は排気ダクトから屋外排気、水冷式の場合は冷却水温度を低く、そして、吸気は屋外空気からが省エネのポイントとなります。
アフタークーラーによる冷却の結果として、結露により水滴(ドレン)が発生します。例えば、温度20℃、大気圧、湿度65%の湿り空気を毎分5立法メートルで10時間稼働し(稼働率は90%)、0.7MPa(G)まで圧縮し30℃でアフタークーラーを出るときのドレン量を求めると次の通りとなります。
大気中の温度と飽和水蒸気量の関係は下表のとおりです。
温度℃ |
0 |
5 |
10 |
15 |
20 |
25 |
30 |
35 |
40 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
飽和水蒸気量 |
4.85 |
6.79 |
9.39 |
12.8 |
17.2 |
23 |
30.3 |
39.6 |
51.1 |
吸込状態1m3(*)中の水分量は11.2g(=17.2×0.65)。
* m3=立法メートル、以下同
圧力下での水分含有量は【(同じ温度での大気圧下の水分含有量)÷(圧縮比)】で求められます。30℃での大気圧下の水分含有量は30.3g/m3で、圧縮比が7.91[=(0.7+0.1013)÷0.1013]であることから、アフタークーラーを出る圧縮空気中に含まれる1m3中の水分量は3.8g(=30.3÷7.91)と求められます。
以上から、一日に発生するドレン量は19,980g[=5m3/min×60min/h×10h/日×0.90×(11.2-3.8)g/m3]となり、毎日、約20Lものドレン水を処理する必要があります。
また、表からご理解いただける通り、温度が高いほど飽和水蒸気量も多くなります。このため、気温と湿度の高い夏場はエアーコンプレッサーにとり最も過酷な時期であり、よりこまめな維持管理を必要とします。
- 回答者
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技術士(衛生工学) 加治 均