省エネQ&A
蒸気圧力を下げたときの省エネ効果の求め方は?
回答
蒸気を熱交換器等により間接的に利用する場合、熱的に利用されるのは蒸発潜熱です。そして、蒸発潜熱は圧力が低い蒸気ほど大きく、例えば、現状の絶対圧が0.80MPaで見直し後の絶対圧が0.40MPaで、ボイラー給水を50℃で供給したときの省エネルギー効果は5.2%です。
「 蒸気の乾き度を求める方法を教えてください。」でご説明した通り、蒸気を熱交換器等により間接的に利用する場合、熱的に利用されるのは蒸発潜熱です。蒸発潜熱は圧力が低い蒸気ほど大きく、圧力が高くなるにつれて小さくなっていき、ついには臨界圧力(22.06MPa)で蒸発潜熱は0になります。一例として、絶対圧(注1)が0.2、0.4、0.6と0.8MPaのときの飽和温度、飽和水、蒸発潜熱と飽和蒸気の比エンタルピーを下表に示します(注2)。
今、現状のボイラーの絶対圧をP1、蒸気量をW1、飽和蒸気の比エンタルピーをH1、蒸発潜熱をL1、ボイラー給水の比エンタルピーをH0としたときの必要加熱量QD1はQD1=W1×(H1—H0)で表されます。また、圧力見直し(低圧化)後のボイラーの絶対圧をP2、蒸気量をW2、飽和蒸気の比エンタルピーをH2、蒸発潜熱をL2、ボイラー給水の比エンタルピーをH0としたときの必要加熱量QD2はQD2=W2×(H2—H0)で表されます。
現状と見直し後での熱効率は、実用上、同じ熱効率と考えても良いため、熱効率をηとすると、それぞれの必要燃焼量QF1とQF2は、QF1=QD1÷η、QF2=QD2÷ηで表されます。
一方、(間接加熱の場合)加熱に有効な熱量は蒸発潜熱であり、加熱量は変わらないためW1×L1=W2×L2の関係が成り立ちます。
QF1とQF2は燃焼量であり燃料消費量そのもののため、(QF1—QF2)÷QF1が省エネルギー効果を表しています。
以上を纏めると、
省エネルギー効果=1—{(H2—H0)÷(H1—H0)}×(L1÷L2)・・・(1)
となります。
例えば、現状の絶対圧が0.80MPaで見直し後の絶対圧が0.40MPaで、ボイラー給水の比エンタルピーを209kJ/kg(ドレン回収などにより50℃で供給)としたときの省エネルギー効果は(1)式に上記表の比エンタルピーを代入し、
省エネルギー効果=1—{(2739—209)÷(2769—209)}×(2048÷2134)=0.052
と求められ、5.2%もの省エネ効果が期待できることが分かります。
注1:真空を基準に表した圧力のこと。「絶対圧」に対し、「ゲージ圧」という表し方もあります。通常使われている蒸気ボイラーの圧力は、圧力計で表示されるため、ゲージ圧力で表示されています。絶対圧とゲージ圧の関係は、【絶対圧=ゲージ圧+大気圧】となります。また、絶対圧とゲージ圧を区別するため、圧力単位(例えばMPa)の後に、絶対圧であればA(例えばMPaA)、ゲージ圧であればG(例えばMPaG)を付けて表すこともあります。
注2:蒸気の持つ熱量等の情報を示したものに「蒸気表」があります。蒸気表は、圧力を基準にしたものと温度を基準にしたものがあり、それも絶対圧で表示されています。
- 回答者
-
技術士(衛生工学) 加治 均