中小企業の税金と会計
寄付金
最終更新日:2018年3月31日
寄付金には、例えば災害等に遭われた方への善意による寄付、地域の祭事等のための寄付等がありますが、寄付金はその支出に対する反対給付(支出に対する見返り)があると言えるものではなく、法人の事業には直接関係のない支出とされています。
会計上では
費用
(寄付金) ××× (現金預金) ×××
と仕訳処理を行い、寄付金を費用とすれば会計処理は終了します。
しかし税務上、もし寄付金すべてを損金として算入できるのであれば、国へ納税するよりも、その法人の関係する団体へ寄付することを選択する法人が増え、税収不足にもなりかねません。
また逆に、すべてを損金不算入とするのであれば、災害等への義援金や、地域貢献のために支出する法人もなくなってしまうことでしょう。
そこで法人税法上では、寄付金を以下のように大きく1.~3.の3種類に分けることにより、それぞれ寄付金の損金算入限度額を定め、寄付行為と税収のバランスを図っています。
- 指定寄付金等
- 特定公益増進法人等に対する寄付金
- その他の寄付金(一般の寄付金)
なお、それぞれの詳細については後述します。
法人税法の寄付金に対する概念
一般的に「寄付」は金銭や財産などを公益性が高い者に対して寄贈するもの、と捉えられますが、法人税法上は、それだけが寄付ではありません。
法人税法の寄付とは「寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義を問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」と法人税法第37条に規定されています。ですから、公益法人や独立行政法人等に金銭を贈与するだけが寄付ではありません。
例えば子会社に時価3000万円の土地を簿価の1000万円で譲渡した場合、低額譲渡した部分(差額の2000万円)は子会社側では受贈益として認定され、親会社側では3000万円で譲渡したとされ2000万円の譲渡益と2000万円の寄付金とされることもあり損金算入が制限され、結果的には親子会社で二重課税となりうる場合もあるので、注意が必要です(*100%子会社は受贈益の認定がないので、二重課税にはなりません)。
寄付金の種類
1.指定寄付金等
主に公益性が高いと認められている公益法人等に対する寄付金であり、以下のようなものが挙げられます。
- 国又は地方公共団体に対する寄付金(その寄付金が最終的に国又は地方公共団体に帰属しないものを除く)
- 国立大学法人、公立大学法人に対する寄付金
- 独立行政法人日本学生支援機構に対する寄付金で学資の貸与に充当されるもの
- 日本赤十字社等の募金団体に対する義援金で、最終的に義援金配分委員会に拠出されるもの
- 赤い羽根共同募金
- 宗教法人が所有する国宝又は重要文化財保護のための修理、防護施設設置の費用に充てられるもの
損金算入限度額は、全額損金算入→公益性が高いものであるため、全額損金算入が認められます。
2.特定公益増進法人等に対する寄付金
特定公益増進法人、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対する寄付金であり以下のようなものが挙げられます。
- 独立行政法人(独立行政法人理化学研究所、独立行政法人国立文化財機構等)に対する寄付金
- 地方独立行政法人のうち一定の業務を主たる目的とするもの(例えば、地方独立行政法人が運営する病院等)に対する寄付金
- 自動車安全運転センター、日本赤十字社等に対する寄付金
- 公益社団法人、公益財団法人等に対する寄付金
- 認定NPO法人に対する、特定非営利活動に対する寄付金
- 学校法人、社会福祉法人等に対する寄付金
損金算入限度額は、普通法人の場合、次の算式で算出された金額まで損金に算入できます。
*「その事業年度の所得の金額」は寄付金支出前の金額です。
3.その他の寄付金(一般の寄付金)
上記「1.指定寄付金等」および「2.特定公益増進法人等に対する寄付金」のいずれにも該当しない寄付金は、その他の寄付金となり、以下のようなものが挙げられます。
- 政治団体に対する寄付金
- 宗教法人等に対する寄付金(指定寄付金等を除きます)
- その他(指定寄付金等、特定公益増進法人等に対する寄付金に該当しないもの)に対する寄付金
損金算入限度額は、普通法人の場合、次の算式で算出された金額まで損金に算入できます。
*「その事業年度の所得の金額」は寄付金支出前の金額です。
算式からわかるように、例えば「資本金1000万、赤字の会社」等は上記の算式にあてはめてみると6,250円しか損金算入できません。ですから、寄付金による節税効果を考えている方は、注意が必要です。
交際費と寄付金の区分
「交際費」と「寄付金」はよく似ており、経理処理においても、どちらの区分にするか迷うことも多いと思います。
両方の定義を法人税法等の法令に従えば、交際費とは「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」をいい、寄付金とは「金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与」をいいます。
ですから、支出の名義にとらわれず、個々に的確に判断していくことが必要となるでしょう。
なお、租税特別措置法61条の4には特に(1)社会事業団体、政治団体に対する拠金(2)神社の祭礼等の寄贈金、は交際費等に含まれないものとすることとされています。
企業版ふるさと納税
1.概要
個人が行うふるさと納税は、平成27年1月から税額控除上限額が個人住民税所得割額の2割に引き上げられ、爆発的に利用者が増えたことから、各自治体間の返礼品競争にまで発展し、総務省が高額な返礼品等の自粛を促す事態とまでなりました。
平成28年度税制改正において、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)が創設されましたが、この2つの制度は名前こそ似ていますが、内容は全く異なる制度となっており、注意が必要です。
企業版ふるさと納税は、地方公共団体が作成し、内閣府が認定した地方創生事業に対して寄付金を拠出した青色申告法人に、従来の寄付金損金算入措置に加えて、一定の金額の税額控除を認める制度となっています。
*地方交付税の不交付団体である東京都、不交付団体で三大都市圏の既成市街地等に所在する市町村は対象外となっています。
2.税額控除限度額
税額控除限度額は税目ごとに設けられており、最大で寄付額の約30%が税額控除されます。
- 法人事業税 寄付額の10%(法人事業税額の20%が上限)
- 法人住民税 寄付額の20%(法人住民税法人税割額の20%が上限)
- 法人税 2が寄付額の20%に達しない場合、寄付額の20%から2の控除額を差し引いた額
(寄付額の10%、法人税額の5%が上限)
控除限度額に達した場合のイメージは次の通りです。
3.企業版ふるさと納税の注意点
この企業版ふるさと納税には10万円という下限額が設定されており、これを下回った場合には税額控除が認められない他、寄付金を拠出した企業の本社が所在する地方公共団体への寄付は対象外となっています。また個人が行うふるさと納税とは異なり、拠出企業への返礼品等の経済的見返りは禁止されています。
自己負担額の面においても、個人が行うふるさと納税では最小で2千円の自己負担額で済むのに対し、企業版ふるさと納税では寄付額のおよそ4割を負担する必要がある点に注意が必要です。