中小企業の税金と会計
所得税の青色専従者給与と専従者控除
2014年3月29日
個人事業者の多くが家族と一緒に働いています。しかしながら、事業を営む個人が配偶者など家族の従業員に給与を支払っても所得税では原則として経費に認められません。ただし、一定の条件を満たすことによって、家族に給料を支払い、その金額を必要経費にすることが可能となります。
また、わが国の所得税は、所得の多寡によって段階的に税率が上がる仕組みになっています。そこで、青色申告者は、家族従業員を青色事業専従者とし給与を支給することで、所得を分散させることができるため(事業主の所得は減少)、一世帯の総所得額を変えることなく節税に役立ちます。
ただし、専従者となった場合、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の対象とはならなくなります。
1.青色事業専従者の取り扱い
青色事業専従者給与として認められる要件は、次のとおりです。
(1)青色事業専従者に支払われた給与であること。
青色事業専従者とは、次の要件のいずれにも該当する人をいいます。
a. 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
b. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
c. その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
なお、次のような場合には、事業に従事することができると認められる期間を通じてその期間の2分の1を超える期間専ら従事すれば、青色事業専従者とされます。
- 年の中途の開業、廃業、休業又は納税者の死亡、その事業が季節営業であることなどの理由により、事業がその年中を通じて営まれなかった場合
- 事業に従事する親族の死亡、長期の病気、婚姻その他相当の理由によって、その年中を通じて納税者と生計を一にする親族として事業に従事することができなかった場合
ただし、次に該当する人のその該当する期間は、たとえ事業に従事していても、専従期間には含まれません。
- 高校、大学その他専修学校などの学生又は生徒である人。ただし、昼間営業に従事する人が夜間の授業を受ける場合、夜間営業に従事する人が昼間の授業を受ける場合、又は常時修学しない場合などのように、事業に専ら従事することが妨げられないと認められるときは、学生又は生徒である期間も専従期間に含まれます。
- 他の職業がある人。ただし、その職業に従事する時間が短いなどの関係で事業に専ら従事することが妨げられないと認められる場合には、たとえ他の職業があっても、専従期間に含まれます。
- 老衰その他心身の障害によって事業に従事する能力が著しく阻害されている人。
(2)「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること
提出期限は、青色事業専従者給与を支払う年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2カ月以内)までです。この届出書に記載しなければならない事項は下記のとおりです。
青色専従者給与届出事項
- 届出書提出者の氏名・住所(納税地)
- 青色事業専従者の氏名・続柄・年齢
- その職業の内容
- 給与の金額・支給期
- 他の事務等にも従事している場合にはその事実
- 他の使用人に支払う給与の金額、支給の方法、形態
- 昇給の基準
- その他参考になるべき事項
(3)届出書に記載されている方法により支払われ、しかもその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること
(4)青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること
過大とされる部分は必要経費とは認められません。
2.白色事業専従者の取り扱い
事業専従者控除額は、次のイまたはロの金額のどちらか低い金額です。
イ)事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者1人につき50万円
ロ)この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額
白色事業専従者控除を受けるための要件は、次のとおりです。
(1)白色申告者の営む事業に事業専従者がいること
事業専従者とは、次の要件のすべてに該当する人をいいます。
a. 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
b. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
c. その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること
(2)確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること
ただし、事業専従者として控除を受ける人または白色申告者の事業専従者である人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
家族従業員の取り扱い
3.不動産所得者が支給する専従者給与は要注意!
自己が所有する、空いている土地を小規模な駐車場として貸した場合にその収入から家族に給与を支払った場合には、その給与は必要経費にはなりません。
これは、不動産所得者が事業専従者給与を認められる場合には、賃貸規模が事業的規模で行われていなければならないためです。賃貸規模が事業といわれる程度の規模で営まれている場合に限り、青色申告者の場合には「青色事業専従者給与」、白色申告者の場合には「事業専従者控除額」を差し引くことができるのです。
もちろん、事業専従者と認められるためには、申告者の営む事業に専ら従事していることが必要になりますので、週に1、2日仕事を行う程度では認められません。
(1)不動産賃貸事業の事業的規模の判定
不動産賃貸事業が事業的規模で行われているかの判定は、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物等の貸付を行っているかどうかにより判定しますが、下記に当てはまる場合は、事業として行われていると判断して差し支えないとされています。
a. 貸間、アパートについては貸し付けることができる独立した室数がおおむね10以上であること
b. 独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること
c. 駐車場のみの土地の貸付については、おおむね50台以上であることとするのが一般的です