中小企業の税金と会計

法人税への効果的な対処法

最終更新日:2018年3月31日

法人に対して課される税金について基礎的なことを説明し、それを知ったうえでどのように戦略的に対処するかを紹介していきます。

法人にはどういう税金が課税されるのか?

法人をつくる場合の税負担はどうなるのか?気になることだと思います。個人の稼ぎには所得税、住民税、事業税、規模によって消費税が課されます。一方、法人の稼ぎには法人税、法人住民税、法人事業税、規模によって消費税が課されます。個人も法人も基本的には同じような税金が課されます。

もう少し具体的に見ていきましょう。先程、個人と法人に対して同じような税金が課されると言いましたが、細かな話をすると、税金の名称は同じでも計算方法が異なります。最も大きな違いは、個人の所得税は稼ぎの大きさによって税率が変動(5%-45%)することです。

一方、法人の法人税は23.2%で一律です。そして、後に解説しますが一定の法人については、年800万円までの所得に対して軽減税率が適用されています。

法人の税率は、資本金の大きさや利益の大きさ、支店の有無などによって変わってきます。それらを説明しているとわけがわからなくなると思いますので、これ以降は前提条件を固定したいと思います。

まず、ここで登場する法人は、資本金が1000万円(これより少ない場合も同じです)、東京都中野区に本店があり(地方に本店が合ってもそれ程差はありません)、本店以外に支店や営業所はなく、従業員数は10人(50人以下であれば同じです)、年間の所得金額(儲け)は1000万円とします。

この法人は3月決算で、平成30年4月1日から平成31年3月31日が事業年度です。8割以上の中小企業がこの前提に当てはまると思います。

さて、この法人に課される税金をまとめたのが図1になります。

図1

いろいろな税金が課されています。法人税と事業税は、所得(法人の利益と思って下さい、後ほど説明します)をベースに税率をかけて税額を計算します。

地方法人税、地方法人特別税、住民税は、税金(法人税や事業税など)をベースに税率をかけて税額を計算します。

どちらの計算方法も所得が増えれば税額も増えるので、所得に連動していると考えられます。そして住民税だけは、所得が発生していなくても均等割という税金が課されます。

この事例の法人では均等割は7万円です。赤字でも最低7万円の納税は毎年あります。よって、この7万円の均等割と税理士へ依頼する決算申告のコストが法人を維持するための最低限のコストだと考えられます。

「利益=所得」ではない

法人に対して課される税金は、所得をベースに決められます。所得が増えれば税負担は増加し、所得が減れば税負担も減ります。

所得とは、法人の当期利益をベースとし、それに一定の調整を加えて計算をします。どのような場合に調整するかというと、法人の利益にそのまま法人税を課税したら不公平となるものを調整します。

例えば、交際費については、会社の当期利益を計算する際には全額経費として認められます。一方で法人税を計算する際には、年間800万円までなら全て経費として認められ、800万円を超えると経費としては認められません。

他にもいろいろな調整項目がありますが、このような調整を行ったうえで利益から所得を計算します。ここでは、当期利益と所得は同じでないことだけイメージできれば十分です。

税金の仕組みを知ったうえで対処する

ここまでは法人に課税される税金の仕組みを説明しました。ここからは、法人に対して課税される税金の仕組みを理解したうえで、これからの強い会社が目指していく税金への対処法を紹介します。

まず、法人税の税率は、先程の前提条件のような法人の場合、年間の所得が800万円までは15%になります。800万円を超えると通常の税率23.2%で課税されます。

3年間の年間の所得金額がコンスタントに年800万円だった法人と、1年目の所得が2400万円、2年目、3年目の所得が0円の法人とでは、3年間の合計所得金額は2400万円で同じですが、課される税金は360万円と491万円というように131万円も違います。

つまり、800万円までの税率15%と800万円を超えた場合の税率23.2%のギャップを利用できるわけです。800万円と800万円超では税率が8.2%も違ってくるため、法人の所得は毎年800万円前後になるようにコントロールすれば、効果的に法人税に対処可能となります。

また、事業税の税率は、年間所得が400万円以下の場合は3.4%、400万円を超え800万円以下の場合は5.1%、800万円を超える場合は6.7%と3段階になっています。800万円超の6.7%と400万円以下の3.4%では3.3%の違いがありますので、所得がまだ大きくない場合には、毎年400万円前後になるようにコントロールをするといいと思います。

所得が赤字であれば法人税は納税しないが?という意見もあると思います。しかし、本コンテンツでは強い会社にすることを目標としています。課税への極端な対処によって経費を増やして所得を赤字にすると確かに法人税などは均等割の7万円のみの負担となります。しかし、支払いが伴わない税負担軽減には限りがあるため、税負担軽減を図ると基本的には会社のキャッシュが減ってしまいます。

キャッシュが減るといざという時の資金繰りに困ることが生じてきます。これでは強い会社になることができません。年800万円までの所得に対する税金は約25%です。100の利益が出た場合には、税負担軽減で経費を100余分に使うのではなく、100の利益に対する税金約25を納税して、75を内部留保するのです。

75の内部留保と内部留保を0にした場合の差は75ではありません。会社の継続的な利益は、借入の返済原資となりますので銀行からの評価が上がります。75×10=750ぐらいの借入枠を生み出すことにもなるのです。

内部留保だけで資金繰りがうまく回るのであれば、借入をする必要はありません。しかし、いざという時に借入ができるという選択肢があるかないかは非常に大きな違いです。税金の25の負担に目が行きがちですが、経営者としては75の内部留保に着目しましょう。

政策的減税の恩恵を受ける

字数の関係で制度の細かな条件は別の機会に説明をしたいと思いますが、国が社会的な問題を解決するために政策的に減税を行うことがあります。今ですと、給与を増やすと減税になったり、設備投資を行うと減税になったりというものがあります。その時によって減税の対象となるものが異なりますが、政策的減税も有効に使うと効果的です。

アジア諸国の法人に対して課税される税率に比べ、日本の税率は高くなっています。近年の税制改正で法人税が減税されましたが、さらに減税になる可能性が高いと思います。現在の傾向としては、所得税の税率は上げる方向で、法人税の税率は下げる方向にあります。法人税の減税の波に乗るためにも、納税をしながら会社を強くするという手法を検討してみて下さい。