中小企業の税金と会計
子会社等に対する支援損等
最終更新日:2018年3月31日
グローバル化の進展により、企業はますます厳しい生存競争にさらされています。自らの会社だけならば何とか苦境を乗り越えられるとしても子会社や関連会社、大口取引先等の倒産を契機として大規模な損害を被ることも考えられます。
それら子会社等に支援を行うことは自らの会社に生じうる将来の損失を未然に防ぐために必要不可欠である場合もあります。 では、子会社等の支援は税法上どのように取り扱われるのでしょうか。
1.原則的取り扱い
法人が子会社等に支援金を供与しても、ただちに損金として認められるわけではありません。原則として、法人が拠出金、見舞金その他どのような名義をもってするかに関わらず、法人が金銭や資産または経済的な利益を贈与または無償で供与した場合には、「寄附金」とされて損金算入が制限されています。これが子会社等への無利息貸付等の経済的な利益供与であっても、原則として寄附金に該当し、一定の損金算入限度額を超える金額は損金の額に算入されないのです。
上記のような取り扱いでは、子会社等に経済的な支援を実施しても、大部分が損金不算入となり、親会社の法人税を軽減することはほとんどできません。それでは法人がなすべき適時適切な経営判断を阻害し、より大きな損失を招きかねません。
そこで、法人税法では合理的な再建計画に基づく整理・再建のための子会社等に対する経済的利益の供与については寄附金に該当しないものとしています。
※ただし完全支配関係にある内国法人間で寄附金の受払があった場合、支出した内国法人の寄附については全額を損金不算入とするとともに、受取った内国法人の受贈益についても益金不算入となります。詳細は以下を参照ください。
- グループ法人税制 3.(4)寄附金・受贈益の損金・益金不算入
2.整理・再建のための子会社等に対する経済的利益の供与
(1)整理のための経済的利益の供与
子会社の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために損失負担等をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであると認められるため、やむを得ずその損失負担等をするに至った等、そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとされます。
なお、子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれます。
(2)再建のための経済的利益の供与
法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等をした場合において、それが例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので、合理的な再建計画に基づくものである等、相当な理由があると認められるときは、その供与する経済的利益の額は、寄附金に該当しないものとされます。
合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断しますが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として合理的なものとして取り扱われます。
3.合理的な再建計画
子会社等を整理又は再建する場合の損失負担等については、その損失負担等に経済的合理性がある場合には寄附金には該当しませんが、経済的合理性を有しているか否かの判断は以下のような点について総合的に検討する必要があります。
(1)損失負担等を受ける者は「子会社等」に該当するか
子会社等の範囲としては、単に資本関係を有するものだけでなく、取引関係、人的関係、資金関係など事業関連性を有するものまで広く解されています。
(2)子会社等は経営危機に陥っているか(倒産の危機にあるか)
債務超過の状態にあり、資金繰りが逼迫している場合はもちろん、このまま放置すれば今後大きな損失を被ることが社会通念上明らかである場合も含みます。
(3)損失負担等を行うことは相当か。(支援者にとって相当な理由があるか)
子会社等を支援することにより法人がどのようなメリットを享受するか検討する必要があります。
(4)損失負担等の額は合理的か。(過剰支援になっていないか)
合理的な再建計画では要支援額が適正に見積もられていなければなりません。
(5)整理・再建管理はなされているか。(その後の子会社等の立ち直り状況に応じて支援額を見直すこととされているか)
再建計画の進捗によっては計画を適宜見直す必要があり、そのためには再建状況を常に管理監督しておく必要があるでしょう。
(6)損失負担等をする支援者の範囲は相当であるか。(特定の債権者等が意図的に加わっていないなど恣意性がないか)
特定の債権者等を意図的に排除するようなことがあれば、再建計画の適正性について疑念が生じてしまいます。
(7)損失負担等の額の割合は合理的であるか。(特定の債権者だけが不当に負担を重くしまたは免れていないか)
複数の支援者がいる場合には、支援総額を適正な比率で負担し、計画に明記することが望まれます。
上記は国税庁HP「質疑応答事例」に記載されているものです。
また、子会社等に対する支援が寄附金に該当するか否かは国税庁に事前相談を行うことも可能です。事後の税務トラブルを回避するためにも活用の検討が必要でしょう。